侍ジャパンが、苦しみながらも2015年の初戦をモノにした。初招集の雄平外野手(30)が2回、守備で隙をつかれ、先制を許したものの、8回に決勝適時打を放ち、試合を決めた。国際大会の難しさをあらためて感じさせる試合を経験し、また強くなる。

 雄平は祈るように打球を見つめた。同点の8回無死一、三塁。欧州代表ファンミルの133キロ変化球を振り抜くと、打球は二塁手の左へ。「抜けろ! と思ってました」。二塁手のグラブをはじき、中前へと転がっていった。小久保ジャパンの15年初陣での決勝打に、珍しくガッツポーズが出た。「何とかしたいと思っていたので出ちゃいました」と照れくさそうに笑った。

 代表デビューは、散々な幕開けだった。初回に中前への打球に飛び込んであわや後逸かとヒヤッとさせれば、2回には単打を二塁打にして先制点の足がかりを作った。4回にはフェンス際の飛球をグラブに当てながら捕球できず、2者を生還させた。「自分のプレーで3点も取られた」とベンチでは謝罪して回った。

 「怖かった。重いというか1球の大切さを実感しました」。たった1球で流れが変わる。日の丸を背負って世界と戦う責任感を肌で感じつつも、自分がなぜ代表に選出されたかも分かっていた。「打つことだと思います」。02年に剛速球左腕としてドラフト1位で東北高からヤクルトに入団。結果を残せず09年オフに野手に転向し、右膝前十字靱帯(じんたい)の断裂も乗り越えて侍入りを果たした。自らの野球人生のように、マイナスを取り返して最高の結果を生んだ。

 苦労人の一打は、小久保ジャパンも救った。若手主体の急造チームとはいえ、今秋の「プレミア12」に向けて敗北は許されなかった。価値ある決勝打の雄平を、小久保監督は「(4回の飛球を)捕れなかった後にどうするかに注目していた。引きずらずに打つ方で返したことを評価したい」とたたえた。苦境をしのぎ、終盤に逆転して勝ちをもぎとった。チームにも雄平にも山あり谷ありだったが、ものにしたことに大きな価値がある。【浜本卓也】