勝負の分かれ目は6回にやってきた。打線が3-3の同点に追いついた直後、阪神先発岩田稔投手(31)が1死一、三塁とされると阿部に勝ち越しとなるタイムリーを浴びた。さらに続く金城にもヒットを許して満塁。ここでベンチが動いた。岩田を諦め、2番手に選んだのは新人石崎剛投手(24)だった。

 当然、相手は代打高橋由を送り出してきた。重圧のかかる場面で経験豊富な強打者と対した石崎は、3-1とカウントを悪くすると、ファウルで粘られた後、痛恨の押し出し四球を与えてしまった。亀井は中飛に打ち取ったが、村田には押し出し、坂本には2点打と傷口を広げて致命的な6点を奪われた。

 和田監督 状態もいいと思って送り出したけど、ちょっと酷だったかな。きょうの反省を今後にどう、いかしていくかだ。

 中西投手コーチ あそこは石崎しかいない。これからセットアッパーとして投げてもらわないといけない。ちょっと酷な場面だったけどな。

 首脳陣は新人には過酷な場面だったと認めつつも、開幕してからも安定した投球を披露していた石崎への期待を口にした。

 石崎 緊迫した場面で自分のパフォーマンスが出せないというのを感じた。明日もあるので、気持ちを整理して、何が足りなかったのかを考えたい。ああいう場面で使ってもらって、期待の表れだと感じているんで、それに応えたいです。

 ただ、石崎投入の背景には苦しい台所事情が影響した部分もあるだろう。この日、安藤が右肩の張りで出場選手登録を抹消された。代わりに福原を登録したが、右内転筋挫傷での離脱から実戦復帰して間もない右腕は、まだ万全ではないという。走者を置いた場面でも、安定した制球力でチームを救ってきた安藤の不在が響いた形になってしまった。

 これで巨人戦通算1000敗目となった。「伝統の一戦」に対する歴史を感じると同時に、猛虎にとっては逆襲を期す気持ちになる数字だ。

 和田監督 こっちから言えば1000敗目を1日でも遅らせようという気持ちでいたけど、今までの積み重ねなんで。こっちは1試合1試合という気持ちでやっていくだけです。

 常に打倒巨人に燃えてきた指揮官は力を込めて、こう言った。やられたら、やり返す。ライバルとの戦いの歴史はこれからも続いていく。【鈴木忠平】