中日にまた新星が現れた。2年目の桂依央利捕手(23)がプロ初出場&プロ初本塁打を記録した。8番捕手でスタメン出場すると、5回に左翼席にプロ1号をぶち込んだ。マスクをかぶっても大野の完投勝利を演出した。チームは首位ヤクルトとの直接対決に先勝し、ゲーム差なしと肉薄。今日22日にも奪首だ。

 打った本人もビックリだった。背番号40を背負う桂が、弾丸アーチを放った。1点をリードして迎えた5回1死の場面。ヤクルト成瀬の初球チェンジアップをフルスイング。打球は低い弾道のまま左翼席に突き刺さった。プロ2打席目に飛び出したプロ初本塁打に「無我夢中で思いっきり振りました」。夢見心地でベンチに戻ると、先輩たちから手荒い祝福が待っていた。

 チームにとっての危機も2年目捕手にとっては好機だった。18日広島戦(マツダスタジアム)で右足首を痛めた武山に代わって19日に1軍昇格。ヤクルト先発が左の成瀬ということもあり先発マスクを任された。スタメンを決断した谷繁兼任監督も「キャッチング、投手への声かけ、打席の中のことなど、ファームでやってきたことをそのまま出してくれた。すべてよそいきじゃなかった」とたたえた。

 即戦力と期待されながらも1年目に1軍の舞台に上がることはできなかった。二塁送球1・8秒の強肩を持ちながら、投手への返球もおぼつかなくなるなど、追い詰められた時期もあった。どん底を味わった男が、お手本にしたのは指揮官のキャッチング。チームスタッフから渡された谷繁兼任監督の捕球映像を昨秋から毎日のように見た。達川チーフバッテリーコーチが「監督に似てきた」というほど足の運びをまねた。

 バッテリーを組んだのは3歳年上の大野だった。何度も首を振られながらも「テンポよく。気持ちよく投げてもらうことだけ考えた」と必死でリード。入団から指導を続ける達川コーチは「大野が首を振るのを150回まで数えたけど、それ以上は数えらんかったわ」とうれしそうだ。長年の課題とされてきたポスト谷繁。桂が放った弾丸ライナーが竜の未来を明るく照らした。【桝井聡】

 ◆桂依央利(かつら・いおり)1991年(平3)7月9日、大阪市生まれ。南百済小2年からソフトボールを始め、中野中ではボーイズの「東住吉」に所属。太成学院大高(大阪)で1年秋からベンチ入り。甲子園出場なし。大商大では4年春、秋に首位打者。13年ドラフト3位で中日入団。185センチ、83キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸600万円。

 ▼8番捕手でプロ初出場の桂が5回に本塁打。ドラフト制後、プロデビュー戦でマスクをかぶって本塁打を放った捕手は、78年山倉(巨人)80年香川(南海)97年小野(ヤクルト)同年清水(ロッテ)07年川本(ヤクルト)に次いで8年ぶり6人目。桂は7回にも中前打を放っており、本塁打&マルチ安打は初めて。