まさかの急変だった。6回1死までパーフェクト投球の中日山井大介投手(36)が四球と失策をきっかけにつかまり、一挙4失点。記録がついえると同時に乱調に陥った。ただし、山井だけを責められない。リーグトップの得点圏打率を誇った打線は今季最多タイの14残塁。最終回の無死満塁も生かせなかった。ナゴヤドームで6度目の劇勝は見せられず、巨人に抜かれて3位に転落した。

 悲鳴とともにセンターにまっすぐ伸びる飛球が、山井をゲームの主役から引きずり下ろした。6回1死一、二塁から山田に中越え二塁打を浴びた。最初の被安打が同点打になった。

 課題の初回を5球でクリアすると、丁寧な投球で6回1死までパーフェクト。07年日本シリーズで8回完全投球、13年にノーヒットノーランを達成している男だ。まだ中盤だが、いやが応でも期待は高まる。

 場内のざわつきを敏感に感じ取ったかのように潮目は突然、訪れた。6回1死から大引への四球で完全試合がついえる。「最初の走者の出し方がよくなかった」と山井は悔やむ。次の森岡は二塁亀沢の失策。そして山田に痛打された。

 流れを止められない。続けざまに上田に勝ち越し2点打、雄平に二塁打を許した。「走者が出てからは投げ急いでしまった」。前回16日の阪神戦の初回に続く1イニング4失点を反省した。

 「その前の回にファインプレーで点が入らない流れで、しのいでくれたらと思っていた。ミスも3つ重なってね。踏ん張りどころだった」と谷繁兼任監督。主戦に期待する開幕右腕にあえて注文をつけた。

 ただ、山井だけが責任を背負い込む試合でもない。3回に福田の中前打で1点先制したが、監督が指摘した5回1死一、二塁でエルナンデスの快打を右翼上田にスーパー捕球される不運があった。不安定な石山に対して塁をにぎわせては凡退の連続。3点を追う9回は無死満塁で期待の福田、ナニータ、エルナンデスが倒れた。6度目の劇勝を一瞬夢見たファンの大きなため息で試合は終わった。

 残塁は最多タイの14にのぼった。指揮官は「あと1本だけど、しょっちゅう出てたらこんな楽なことはないですよ」と語った。ナゴヤドームでは11勝3敗となった。4月は10勝。月間11勝とすれば04年8月、10年8月に続く3度目。ともにリーグ優勝した年だ。チャンスは今日23日だけ。ゲンのいい記録を置き土産にして、ロードに出たい。【柏原誠】