小飛球がグラウンドに弾んだ瞬間、猛虎色の歓声が竜の巣を包んだ。阪神マット・マートン外野手(33)が貴重な2点適時打を放ち勝利に貢献した。

 「チーム全体として、いい形で点が取れたなと思う。いいところに落ちてくれたなと思います」

 3回、2点差を追いつき、なお2死満塁。内角高めに食い込むようにして抜けてきたボール球のフォークを、バットを払うように当てた。フラフラと舞った打球は左翼前へポトリ。勝ち越し2点打にマートンは一塁上でニヤリと笑みを浮かべた。この回、一気の6得点。終わってみれば、安打はこの回だけの6安打ながら、ギュッと濃縮された12人攻撃だった。

 マートンはこの試合で通算出場試合数を780試合とし、クロマティ(巨人)を抜いて、セ・リーグ歴代8位に浮上した。これだけの数字を積み重ねることができたのは、理由がある。日本で過ごす6年目の夏。高温多湿の夏を乗り切るため工夫は欠かさない。夏場は普段より多めにバナナやパイナップルなどフルーツを口にする。ビタミンを豊富に摂取し、過酷な試合環境でも高いパフォーマンスを行う準備をしている。

 また両腕にはメッセンジャーと同じモデルのゴム製ブレスレットを装着。右腕が付けているのを目撃してから自身も取り入れている。「ランディは僕のお兄さんなんで。ランディがやることを自分もやっただけだよ(笑い)」。何でも実行してみる。その姿勢が好結果につながっている。

 この男にとってこの記録も通過点にすぎない。歴史を次々と塗り替え、猛虎を導いていく。