日本ハム大谷翔平投手(21)が、プロ入り後初のサヨナラ打を放った。8日の楽天20回戦、3-3で迎えた延長10回無死満塁で代打で登場。フルカウントから楽天武藤の変化球を右翼線へはじき返し、4時間超の熱戦にピリオドを打った。前日の同戦も代打でダメ押しの4号本塁打をマーク。連夜の活躍でチームに連勝をもたらした。

 一塁をまわった大谷は、ヘルメットを高々と放り投げた。「うれしかったです。誰が最初に(祝福に)来たのかも覚えてない」。記憶が吹っ飛んだ。ずぶぬれになった。「冷たかったです。でもうれしかったんで、いいかな」。人生初めてのサヨナラ打。全身を突き抜ける興奮に酔った。

 同点で迎えた延長10回無死満塁の好機。ベンチ入り野手最後のひとりだった大谷に声がかかった。「ケガをしたら代える選手もいない。あそこで決めるしかないと思った」。代打のコールに大歓声がわき起こった。「何とか外野まで」。犠飛に狙いを絞り、楽天武藤と相対した。

 フルカウントとなり6球目、内角に切れ込むスライダーをファウルにした。「四球は考えていない。全球種振るつもりでいました」。続く直球にも食らいつくと、再び投じられたスライダーを、今度はフェアゾーンへ打ち返した。同点打の矢野と上がったお立ち台。先輩にけしかけられ「ファイターズ最高!」と2人で絶叫した。感情を爆発させ続けてきた大谷が、ラストシーンだけは照れ笑いを浮かべた。

 代打待機の多い矢野とは、スイングルームで一緒になる。そんなとき、ストレッチや素振りで体を温めながら、大谷の目は矢野を追っている。「どんな状況でも、しっかりと気持ちをつくって、(バットを)振れるようにする。矢野さんを見ていて思う」。前日7日の代打本塁打に続く、2夜連続の大仕事。心の準備ができている証しだった。

 大谷のバットと比例して、チームの状態も急上昇してきた。「ソフトバンクに負けたのも僕からだったので。継続してやっていきたいです。明日(9日)が大事だと思う」。少しずつでも、確実に、首位との差は縮まっている。この日のような劇的な展開は、きっと秋まで続いている。【本間翼】

 ▼大谷が延長10回、代打サヨナラ安打。先制、勝ち越しなどの殊勲安打は通算20本目だが、サヨナラ安打はプロ3年目で初めて。延長回での打席は今季初。昨年まで延長回では通算6打数0安打で、初の安打がサヨナラ打となった。

 ▼代打起用は本塁打を放った前日に続き、矢野と並んで今季チーム最多タイの13度目。代打では11打数4安打、打率3割6分3厘で、昨年(3割8厘)から2年連続で打率が3割を超える。延長回での代打起用は13年9月4日ソフトバンク戦(三振)以来2度目で、安打は初めて。