黒田の魂を必死でつないだ。広島が1点差を逃げ切り、2カードぶりのカード勝ち越しを決めた。緒方孝市監督(46)が、9回の際どい判定に鬼の形相で猛抗議をするなど必死のタクトを振った。巨人に助けられた一面もあり依然としてミスは多い。だが、負けられない戦いが続くなかで残した白星を胸に、借金5からまたスタートを切る。

 赤鬼と化した。緒方監督はベンチを飛び出した。9回1死満塁。坂本の右邪飛でのタッチアップを巡り二、三塁間、そして三本間で挟殺プレーが起こった。最後は三塁走者の鈴木が三塁に滑り込むもタッチはセーフ。納得できなかった。審判の顔をにらみつけ、大声で猛抗議。「絶対アウトじゃ!」。マイクに拾われるほどの音量で、審判と帽子のつばはぶつかった。覆ることはない。それは分かっていたが、勝利への執念が体を動かした。約3分の抗議に、姿勢を込めた。

 緒方監督 クロ(黒田)のああいう姿を見て、また野手も奮起して、また明後日から試合に臨める。勝つしかない。勝ち越しどうこうではない。とにかく勝ち続けるしかない。

 いてもたってもいられない状況だった。黒田の魂の投球を救うはずの野手が、ミスを連発。ベテラン新井がバント処理をミスすると、梵がファウルフライを捕球できないなど続出。いつ大量リードを奪われてもおかしくない状況だった。8回には大瀬良が先頭を出すなど無死一、二塁を招くも無失点でしのぎ、バトンを落とさずに回していた。最後は指揮官の抗議に奮起したであろう中崎が、なんとかゴールテープを切った。

 ナゴヤドームで3連敗し戻ってきた本拠地。巨人3連戦は初戦を落としたものの2連勝。前日22日には巨人戦シーズン勝ち越しを決めた。「やっぱり巨人戦は特別な思いがあるよ」。指揮官の根底には強者に食らいつく美学がある。

 負ければ自力優勝が消滅する危機を2連勝で乗り切った。借金を再び5に戻し、上位進出を虎視眈々(たんたん)と狙う。「勝ったなかでも反省はたくさんある。ミスがちょっと多く出すぎる」。反省と修正を繰り返し、緒方カープは前へと進んでいく。【池本泰尚】