最速200万人動員に御礼だ。ソフトバンクのリック・バンデンハーク投手(30)が新外国人投手のプロ野球新記録となる開幕7連勝を飾った。前回対戦で危険球退場となったロッテ戦にもひるまず、台風による高層マンションの揺れにも動じず…。8回無失点と安定感抜群の好投で、チームは今季5度目の5連勝。優勝マジックは22に減った。

 負け知らずの男にして、今年最高の出来だった。バンデンハークが8回130球の熱投。テンポよくアウトを重ね、スコアボードにゼロを並べた。新外国人投手の新記録となる開幕7連勝。5回までは無安打。三塁さえ踏ませない、文句なしの仕事ぶりだった。

 「(新記録は)光栄に思うが、自分1人の力ではできない。素晴らしいチームでプレーできていることに感謝している」

 この日の相手は、7日の登板で清田への頭部死球で危険球退場したロッテ戦。試合前にグラウンドで清田を見つけると「ゲンキ? ダイジョウブ?」と声をかけた。清田の返事は「大丈夫!」。その笑顔を見て「気持ちが少し楽になった」という。引きずることなく内角を突いた。奪った10三振のうち、7つが直球。制球力、球威とも終盤までさえ渡った。完封こそ逃したが「うちには日本一のクローザーがいるから」と笑った。

 前回登板予定だった21日楽天戦が雨で流れ、中11日での登板だった。前日25日には来日後、初めて台風が福岡に接近した。「フロリダでも何度かハリケーンを経験しているけど、マンションが風で揺れて、ちょっと気になったよ」と苦笑いだったが、マウンドでの安定感は変わらなかった。

 16歳でオランダから米国に渡り、韓国を経て来日した。「自分から積極的にその国のことを学んでいくのがスタイル」。休日にはアナ夫人とともに県内外に出かけ、寺、焼き物など日本文化に触れる。そんな姿勢が日本での好成績にもつながっている。

 この日の起用は今後、西武戦、日本ハム戦と上位チームとの対戦を見据えてものだった。工藤監督は「優勝は勝率で決まる。(7勝の)バンデンと(8勝1敗の)寺原が大きな力になってくれているのは間違いない。今日は楽でした」と絶賛した。終盤戦、そしてポストシーズンに向けても、バンデンハークの安定感はチームにとって大きな武器。信頼をさらに強固にする快投だった。【福岡吉央】

 ▼バンデンハークが無傷の7連勝。来日1年目の外国人投手が開幕7連勝は53年カイリー(毎日)09年ファルケンボーグ(ソフトバンク)10年マーフィー(ロッテ)の6連勝を抜く新記録。09年に6勝0敗のファルケンボーグが10年の1勝目を加えてマークした来日初登板から通算7連勝の記録にも並んだ。日本人投手では66年堀内(巨人)がプロ初登板から13連勝しているが、バンデンハークの連勝はどこまで続くか。