崖っぷちに立たされた。緒方カープがヤクルトに逃げ切られ、手痛い連敗を喫した。先発クリス・ジョンソン投手(30)が初回に3失点。ブラッド・エルドレッド内野手(35)の1発などで1点差に詰め寄ったが、追いつくことはできなかった。首位阪神とのゲーム差は5・5に広がり、早ければ明日6日にも自力優勝が消滅する。土俵際に詰め寄られた緒方カープが、意地の見せどころだ。

 敗戦の帰路は長く感じられた。グラウンドを歩き、クラブハウスへ向かう監督、コーチ、選手にはファンからの厳しい声が飛んだ。最も厳しい言葉を受けたのは緒方監督だった。やじは耳に入っていた。それでも指揮官は真っすぐ、前だけを見つめ、歩を進めた。

 緒方監督 立ち上がりがね。3点が痛かった。(攻撃では)もうひと押しできなかった。(カード初戦を)取りたかったけど…。1戦1戦と言っているように、また明日、明日…。

 初回の3点が重くのしかかった。3回に新井の適時二塁打で1点を返し、6回にはエルドレッドに1発が飛び出した。だが、最後まで試合の流れを引き寄せる攻撃はできなかった。1点を返した3回は、なお1死一、三塁で5番梵と今季初先発の下水流が凡退。8回は無死一、二塁から4番エルドレッド、5番梵が連続三振。最後は代打松山が一ゴロに倒れた。その裏には、守備のミスから試合を決定づける失点を許した。

 新井は試合終了直前までベンチでバットを握りバーネットの投球にタイミングを合わせていた。「勝たないと。いつも言っているように、状態や調子がいいとか悪いとかではない。まして試合が始まれば、絶対打ってやるぞと思って打席に入っている」。ブルペンでは大瀬良、中崎が同点、逆転を信じて肩を作っていた。

 緒方カープは土俵際に追い込まれた。連敗で借金は5となり、首位阪神とは5・5ゲーム差に広がった。早ければ明日6日に自力優勝が消滅する。今日5日、先発するベテラン右腕は力強い口調で言う。

 黒田 どれだけ目の前の試合に全身全霊で臨めるか。

 土俵を割ってしまえばすべてが終わる。でもまだ土俵際。ファイティングポーズは崩さない。徳俵は最後の力を振り絞るためにある。【前原淳】