右足内転筋の張りで離脱中の阪神呉昇桓投手(33)のクライマックスシリーズ登板が8日、絶望的になった。巨人とのCSファーストステージ開幕(東京ドーム)を明日10日に控えるが、9月26日の出場選手登録抹消後、まだ投球練習を再開できず。右足の状態が万全ではないという。日本シリーズ登板も厳しいとみられ、球界初のリーグ戦借金からの日本一を目指す和田阪神の有終に、不安材料が持ち上がった。

 広島が敗れ、3年連続CS進出が決まった一夜明け。阪神ナインは10日からのファーストステージ巨人戦に気合を入れ直し、甲子園で調整を本格化させた。だが、そこに浮かない顔の呉昇桓がいた。右内転筋の張りで9月26日に抹消され、この日にも投球練習を再開するかと思われていた。だが、依然、ピッチングには至らず。この日も、軽めのキャッチボールだけで終了。CSでの復帰登板が絶望的となる非常事態が発生していた。

 中西投手コーチが厳しい表情で明かした。「ちょっときついな…。ブルペンで投げてないし、キャッチボール以上ができていない。全力で投げられないから登録できない」。守護神は紅白戦を横目に、寂しくロッカー室に消えた。

 球界初のリーグ戦借金から日本一へ。退任する和田監督のラストを飾るべく、“最大の下克上”を目指すチームにとって、2年連続セーブ王の不在はあまりにも痛い。昨年CSは広島と巨人相手に6戦4セーブ&1ホールドの大活躍で、無敗での日本シリーズ進出に貢献。短期決戦での勝負強さも証明した。代役守護神は福原や安藤が有力候補だが、今季終盤は下降線。競り合いになった場合の、大きな不安材料が発生した。

 右内転筋痛が治癒しない。もちろん劇的に回復すれば、14日からのヤクルトとのファイナルステージなどCS中の復帰の可能性もゼロではないが、極めて厳しい状況だ。投球練習再開のメドも立たず、CSを勝ち抜いた場合の日本シリーズ登板も難しく映る。和田監督も「ちょっとよくない」と超スクランブル継投を覚悟するしかなかった。

 前日、今季で2年契約が切れる阪神について「残りたい気持ちはある」と語った。だがメジャー挑戦願望など去就は未定で、今後登板機会がないまま退団に至る可能性もある。絶対的守護神を欠いて迎えるポストシーズン。有終を期す和田阪神は最後の最後まで崖っぷちの戦いを強いられる。【松井清員】