阪神が8日、監督就任を要請している金本知憲氏(47)と2度目の極秘交渉を行ったことが分かった。関係者によれば、今回も猛虎改革を託したいという誠意などを伝えたという。結論には至らなかった模様だが水面下で着々と進められていく金本監督誕生へのステップ。決着はクライマックスシリーズ(CS)終了後となりそうだ。

 2度目の交渉も極秘裏に行われた。この日、兵庫県西宮市の球団事務所に姿を見せなかった南球団社長は会談の有無についてすら「何も知りません」と口を閉ざした。ただ、関係者によれば、今月1日以来となる来季監督要請交渉があったのは事実だという。

 球団側は前回と同じように、10年間優勝から遠ざかっている猛虎の改革を託したい。外国人選手、ベテラン頼みのチーム体質を変えるには阪神をリーグ優勝に導いた抜群の実績と、厳しい練習で自らを鍛え上げた野球哲学を持つ金本氏しかいない。そのためには長期政権も考えている。そんな誠意を伝えたという。そして、そこから前回より踏み込んだ内容へと話し合いが進んだことも予想される。

 一方、金本氏も沈黙を貫いているが、この日、受諾などの結論を出すことはなかったようだ。指導者経験がないままに、現在、難しい状況に置かれている人気球団を引き受けていいのか。周辺関係者からはそんな不安があるのでは、という声も聞かれる。また、4日に行われた宮城県での講演では「まず『やってくれ』『はい、やります!』という簡単なものではないのでね。大変な重荷を背負うことになる。じっくり、じっくり考えたい。本音は…まだゆっくりしたいです」と監督就任に対し、揺れる胸中ものぞかせた。

 球団もそんな金本氏の心情を察してバックアップ体制など、できる限りの環境を整える方針だという。何よりも1度目、2度目と金本氏が交渉の席につき、球団の考えに耳を傾けている事実が、後ろ向きではないという根拠になる。

 明日10日からは和田阪神がリベンジをかけてのCSファーストステージが始まる。周囲への気配りを忘れない金本氏だけに現体制が戦っていることへの配慮もあるだろうと、関係者は話す。第2回交渉でも決断までには至らなかったが、あとは条件面でのすり合わせなどをクリアできれば…。CS終了後にも決着は見えそうだ。

<阪神監督問題経過>  

 ◆9月23日 巨人にサヨナラ負け。自力2位が消え、和田監督は退任危機に立つ。

 ◆24日 坂井オーナーと南球団社長が緊急会談。和田監督の進退は順位確定まで見守る方針を確認。

 ◆25日 広島に3-0で勝利するも、和田監督の退任が確実に。後任は球団OBを中心に選定される方針も判明。

 ◆26日 広島入りした南社長と和田監督が直接会談。

 ◆27日 広島に連敗し、優勝が消滅。和田監督は「全ての責任は私にある」。

 ◆28日 来季新監督をOBの金本知憲氏に要請するよう最終調整に入った。

 ◆30日 電鉄本社での坂井オーナーと南社長のトップ会談で金本氏に正式に監督要請することを決定。

 ◆10月1日 南球団社長が金本氏と交渉を持ち、監督就任を要請。

 ◆4日 金本氏は宮城・名取市で講演。監督問題について初めて公の場で発言。質疑応答で「タイミングさえ合えば」と語った。