広島新井貴浩内野手(38)が6日、広島市内で自主トレを行った。シーズン終了後から神戸と広島を拠点にトレーニングを続けるベテランは、時間を惜しみ、シーズン中に痛めた左手甲の手術を回避して来季への準備を進める。下半身中心で筋力を強化し、秋季日南キャンプの若手のようにスイング量を増やす。来年1月に39歳となるベテランも、自ら追い込む秋を過ごしている。

 視線はすでに来季を向いている。ランニングとキャッチボールで汗を流した新井は、時間を惜しむように急いでトレーニング施設へと向かった。

 「もう1度、自分の体をいじめて、いじめていかないと。年齢を重ねて落ちているところもある。若いころよりもやらないといけないと思っている」

 今年5月に痛め「中指伸筋腱(けん)脱臼」と診断された左手の手術を回避した。運転中にウインカーを上げ下げするときに関節が外れることもある。だが痛みはない。手術後の固定期間で運動量を制限されることを考慮し、「時間がもったいない」と回避を決断。練習量が落ちれば、来季への調整も遅れる。来年1月に39歳となる。シーズンの疲れを取るのではなく、肉体をいじめ抜く。

 左手甲の痛みによる影響だけでなく、開幕前には右肘痛を抱えた。それでも6月終了時点で打率3割1分4厘を記録した。「体力的にも肉体的にも実際にへばった。自分でも分かっていた」と振り返る。シーズン最後まで勝負強い打撃で打線をけん引したが、成績は7月中盤から下降。出場は昨季94試合から125試合、打席数は194から480に増えた。「もう1回この体をたたき直さないといけない。昨年よりもハードにやっている。(体の)どこかが筋肉痛じゃないと落ち着かない」。今季の悔しさを晴らすには練習しかない。ストイックに追い込んでいる。

 チームは得点力アップのため、若手中心のメンバーが秋季キャンプでバットを振り込んでいる。今季チームトップの打率2割7分5厘を残したベテランもこの秋、スイング量を増やしている。「今年はしっかりやりたい。オフの間も振り込みたいと思っている」。ベテランとして若手の台頭を望みながらも、簡単に譲るつもりは毛頭ない。【前原淳】

 ◆新井の左手負傷 5月9日阪神戦で松田の外角カーブを中前適時打にした際に左手甲を負傷。「左手中指伸筋腱(けん)脱臼」と診断され、10日の同戦を欠場した。11日の再検査でも同じ診断をされ、マツダスタジアムで痛みを確認。「痛みはあるが、やれるか、やれないか。自分で決めた。合流します」と即日チームに合流。14日巨人戦で代打出場し、19日の中日戦で先発復帰した。