プロ野球の熊崎勝彦コミッショナーは10日、東京都内で記者会見し、日本野球機構(NPB)の調査委員会(大鶴基成委員長)からの処分案を受け、巨人の福田聡志投手(32)笠原将生投手(24)松本竜也投手(22)の3選手を野球賭博に関与したとして無期失格とし、巨人に制裁金1000万円を科す裁定を下した。野球賭博による失格処分は、1969年に八百長が発覚した「黒い霧」事件以来。3選手は警視庁組織犯罪対策4課から任意で事情聴取を受け、事実関係を認めていることも判明した。

 熊崎コミッショナーは会見の冒頭、「球界を代表して重ねて深く深くおわび申し上げる。再発防止に全力を挙げる所存です」と、頭を下げた。午前10時に調査委員会から提出された報告書を読み、熟慮を重ねた上で出した無期失格の厳罰だった。これによりNPBと選手契約協定を結んでいる大リーグ、韓国、台湾、中国のプロ球団とは契約できない。さらに失格選手の立場は、通常の自由契約選手とは違い、復帰するには失格当時の所属球団の許可が必要となる。過去にNPBを自由契約になった選手しか採用していない独立リーグや社会人野球で選手として活動していくことも事実上できなくなった。

 なぜ3選手が賭博行為に手を染めていったのか? 熊崎コミッショナーが調査委員会に依頼したのは、その背景と誘因の解明だった。そこで明らかになったのが、巨人内部で常態化している賭博行為のまん延だった。3選手以外にも2軍のジャイアンツ球場などで10人以上がトランプ、マージャンなどに金銭を賭けていたことが明らかとなり、9日には巨人が原沢代表の辞任と3選手の契約解除方針を固め、発表していた。

 調査委は八百長が行われた形跡はないが、プロ野球にかかわる賭博や野球賭博常習者との交際はプロ野球への期待と信頼を著しく損なうものとして永久失格に次ぐ無期失格処分が適当とした。巨人に対しては指導、管理が不十分だったとして、制裁金1000万円を科した。モラル低下、金銭を賭けることに対して、まひしていった温床とした。熊崎コミッショナーは「作為的な行為はなかったが、やるべきことを十分にやっていない。健全な方向に持っていくためには球団が監督、指導をやってもらわないと困る」と、厳しく追及した。

 ただし、調査の限界については調査委も熊崎コミッショナーも認めている。3選手と賭博行為で関わったA、B、Cの3人について十分な聞き取りができていないことを明らかにした。大鶴委員長は「調査委としては任意で聞くしかない」と難しさを指摘した。熊崎コミッショナーも「組織的全容の解明には限界、難しさはある。現時点の範囲でベストを尽くすしかない。先頭に立って再発防止に全力を尽くす」と、言った。

 調査委は3選手以外の巨人選手や、コミッショナーを通じて他の11球団にも調査をしたが、野球協約に違反している具体的な情報はなかった。今後、新たな事実が出た場合は調査を続けていく方針だ。

<野球賭博問題の主な経緯>

 ▼10月5日 巨人が福田聡志投手の野球賭博関与を発表。同僚の笠原将生投手に紹介された知人との間で賭け。日本野球機構(NPB)の調査委員会が初会合を開く。

 ▼10月6日 遠藤利明五輪相が「卑劣な行為」と批判。スポーツ振興くじをプロ野球に拡大する法改正に「導入はなかなか難しい」との見方を示す。巨人は全選手や監督、コーチ陣に事情聴取開始。

 ▼10月7日 巨人が熊崎勝彦コミッショナーに野球協約で定められている告発をする。

 ▼10月8日 ソフトバンクなどが問題を受けて選手らに聞き取り調査を開始。

 ▼10月9日 NPBも全職員、審判員に聞き取り調査を開始と明らかに。

 ▼10月21日 NPB調査委は新たに笠原投手と松本竜也投手も野球賭博を行っていたと発表。

 ▼11月9日 巨人が福田、笠原、松本竜の3投手との契約を解除する方針を発表し、原沢敦球団代表は引責辞任。NPBは臨時実行委員会で再発防止策を12球団に説明。

 ▼11月10日 警視庁が3投手から任意で事情聴取したことが判明。熊崎コミッショナーが調査委の処分案を受けて3投手を無期失格とし、巨人に制裁金1000万円を科した。