阪神坂井信也オーナー(67=電鉄本社会長)が10日、鳴尾浜球場を視察し、掛布雅之2軍監督(60)と3軍構想も含めた「若手育成法」について話し合いを持った。11年以降、育成選手を指名していないが金本新監督も育成選手について関心を持っている。猛虎改革の根幹となる若手育成について、議論を重ねていくことになりそうだ。

 坂井オーナーが鳴尾浜で行われている秋季キャンプを視察に訪れた。掛布2軍監督就任以来、初めての視察となったが、2人はバックネット裏の球団ブースで練習を見ながら会談した。オーナーは多くを語らなかったが、2軍監督がその一端を明かした。

 掛布2軍監督 オーナーが言っていたのは、巨人が育成枠を結構取ったでしょう。そのあたりはどうだろうみたいなことをオーナーが僕に聞かれたんで。ソフトバンクのあの強さっていうのはすごい組織力を伴った強さ。だめだったらすぐ下に落として入れ替えがあるから。そういう意味では緊張感のある戦いをしているんじゃないでしょうか、という話を僕はした。

 話題は当然、猛虎改革の根幹である若手育成の方法論だった。その中で出たキーワードは「育成」「3軍」。2年連続日本一となったソフトバンクが3軍制をとっているのは有名だ。掛布2軍監督も今季は育成&打撃コーディネーターという立場でソフトバンク2軍の強さに触れてきた。それが育成論の中心だったようだ。

 阪神は11年ドラフト以来育成選手を指名しておらず「3軍制」を敷くには選手の絶対数、試合数の確保などの問題がある。ただ、今季は育成の田面、トラヴィスが独立リーグのBCリーグに派遣されるなど独自の選手育成の道を開拓し始めたところだ。

 掛布2軍監督 独立リーグにも田面なんかも成功して帰ってきている。こういうのも育成枠の中での結果。だから田面がやったことはすごく意味があることだと思うんですよ。ソフトバンクはチームとして90試合くらい3軍が年間こなしているなんて言ってましたんでね。オーナーもどういう形がチームを強くするのかすごく考えられてるんじゃないのかな。

 掛布2軍監督が指摘するように、仮に育成選手が増えても環境面の変化が伴わなければ、強化にはつながらない。鳴尾浜球場の拡充なども課題の1つだ。

 掛布2軍監督 もしも育成とか枠が増えるようなことがあると、中途半端にすると良くないでしょ、ただ選手が増えるだけで。そういう環境整わないと。その辺りオーナーは考えられてるんじゃないですかね。どういう形がベストなのか。

 金本監督を迎え、猛虎改革に乗り出した。その中心になるのが生え抜きスターの育成であり“鳴尾浜改革”が、その第1歩となりそうだ。

 ◆3軍 ソフトバンクが11年に導入。毎年20人前後の育成選手を擁し、四国ILとの定期交流戦や社会人チームなどと対戦。年間70~80試合を行うほか、韓国遠征し同国リーグ2軍とも10試合程度行う。巨人も来季から新設を決めており、川相昌弘監督が就任。6人の専任スタッフを置き、本格的な育成に乗り出す。広島も3軍スタッフを置くが、主に故障者のリハビリを主眼としている。

 ◆育成選手 05年に初の育成選手ドラフトが実施された。ドラフトで入団した育成選手には支度金が支給され、最低年俸は230万円。自由契約となった選手や外国人選手の雇用も可能。育成選手は1軍の試合には出場できない。オープン戦や2軍の試合などに出場できる。身分を支配下枠に移行すれば1軍出場が可能。山口鉄也、松本哲也(ともに巨人)は育成ドラフト入団から新人王に輝いた。