阪神藤浪晋太郎投手(21)が、2桁完投で窮地を救う意気込みを明かした。不法賭博問題で呉昇桓投手(33)が残留しなければ、勝利の方程式は一大事。だが今季リーグ最多の7を数えた完投をさらに増やして、台所事情の安心材料となる意気込みだ。阪神右腕の2桁完投は、91年の野田浩司を最後に未到の領域。ニューリーダーの自覚もたっぷりの来季4年目右腕が、金本阪神を優勝に導く。

 呉昇桓問題で揺れるチームに若きエース右腕が立ち上がった。2年連続セーブ王が残留しなければ影響は計り知れない。だが藤浪は毅然(きぜん)としていた。「僕が言う立場の話ではないですが」と前置きした上で最悪の事態で自身が果たすべき役割を明言した。

 藤浪 毎試合、1人で投げ切るぐらいの気持ちでやっていきたい。完投はこだわる部分でもありますし増やしたいです。(2桁は)現実的な数字だと思います。

 呉昇桓がいないなら、俺が9回まで投げ切って試合を終わらせる。完投して少しでも中継ぎ陣への負担を減らしてみせる。4完封を含む今季の7完投はリーグトップ。その数も来季は2桁に乗せてみせる。ポスト呉昇桓は球児か福原かそれとも新外国人か…。勝利の方程式が見えない台所事情の安心材料となるべく、頼もしいミスター完投宣言だ。

 投手に打順が回るセ・リーグでの2桁完投は容易ではない。特に近年は役割の分業化が進んで投球数への配慮もあり、直近でも05年の広島黒田、横浜三浦が最後。阪神では92年の仲田以来で、右腕なら91年野田以来24年間、誰も達成していない領域だ。だが藤浪はあえて厳しい目標を立て、実現する心意気。そこにはニューリーダーの自覚が芽生えていた。

 藤浪 来年は22歳。発言で鼓舞するというよりも、思い切ってプレーで若さを出すことが大事だと思います。一生懸命、投げる姿で示したい。勝負どころで抑えて引っ張っていければ。

 フル回転するための肉体改造も着々と進行中だ。今オフは金本監督が奨励するウエートトレーニングに「がっつりという感じ」で没頭し、今季の92キロから3キロ増を目指す日々。「太りにくいタイプ」のため、間食で、バナナとプロテインを合わせた特製ドリンクを補給するなど、藤浪流の「超変革」に取り組んでいる。

 藤浪 今年と同じじゃダメですから。筋肉を大きくして、体つきも変わって新しい感覚も出てくると思う。チームが日本一になるための努力をしていきます。

 前日は金本監督の19勝指令に即答し、阪神右腕では79年小林繁(22勝)以来の難題のクリアを約束。今度は呉昇桓問題の不安一掃へ、2桁完投を誓った。引き締まった表情に漂う自信と手応え。金本阪神元年に頼れる男がいる。【松井清員】