巨人高橋由伸監督(40)が、データを駆使した「V奪還の方程式」を披露した。15日、都内でスタッフ会議を行った。昨季リーグ2位からの巻き返しへ、課題の打線に「打率2割6分5厘」「1試合平均4得点」を要求。12球団トップの防御率を誇った投手陣にも「リリーフ陣の負け数減少」「菅野の鬼門・神宮克服」を求めた。2月の春季キャンプを前に、あえて具体的な数値目標を提示する由伸流で、投打のレベルアップを図る。

 高橋監督が頭の中に次々と数式を書き込んでいった。各担当コーチからプレゼンされた昨季の反省点とデータを基にした今季の目標数値にうなずいた。約2時間の会議を終え「一番の課題の打撃はチーム打率2割6分~2割6分5厘が目標。そこまで上げれば、1試合平均得点が4点前後になる」と理想を挙げた。

 目標値クリアに必要なステップも明確だ。昨季のチーム打率は2割4分3厘。今季も同じ打数と仮定すると102安打を加えれば目標の2割6分5厘に届く。内田打撃コーチはヒットの増産は可能と説いた。「阿部、坂本、長野、村田、亀井がケガで欠場して、ヒットが(見込みより)80本ぐらい失われた」。5人で計132試合を欠場した。コンディションを優先させ、阿部をメジャー式で休養日を設けるプランもある。また12球団ワーストだった犠打成功率7割3厘もキャンプではバーチャル打撃マシンでの練習で改善を図る。

 打率が上がれば4得点に近づく。ここ2年は4得点以上の試合はともに勝率8割だが、昨季は14年より24試合減少した。4点取れば勝てる。シンプルだ。

 一見、無機質な数字に由伸流が込められている。昨季はキャンプ前に原前監督が「野性味」をキーワードに枠組みを示し、個々に考えさせる方策をとった。今年はスローガン「一新」の下、何をどう新しくするかを具体的に示した。

 細部への追及は12球団最強の投手陣にも同じだった。高橋監督は「後ろの3人の負け数が多かった」と、マシソン(8敗)山口(5敗)沢村(3敗)の計16敗の削減を指令。マシソンは外国人枠もありシーズンを通した計算はできない。変則左腕の公文ら若手を1軍キャンプに呼び、必勝継投の増強も視野に入れた。

 さらに菅野だ。神宮球場での未勝利を指摘。「苦手はつくってほしくない。神宮の起用を考慮? そんなんじゃエースになれない」と鬼門突破を厳命した。

 「打率アップ×得点増+リリーフ陣の負け数減×菅野の鬼門突破」。長い方程式を解いた先に、V奪還の答えがある。【浜本卓也】

 ◆巨人の送りバント成功率 12年にはリーグトップの成功率8割2分9厘を記録したが、13年8割2分1厘→14年7割8分7厘→15年7割3厘と年々悪くなり、昨年の成功率はリーグ最低だった。特に、投手は成功22、失敗27の成功率4割4分9厘。トップは菅野と杉内の6割6分7厘で、成功率7割を超えた投手がいなかった。