日本ハム大谷翔平投手(21)の“全米デビュー”は衝撃的だった。韓国ロッテ戦で今季初登板。バックネット裏にメジャー全30球団約80人の関係者が詰めかける異様な雰囲気の中、2月中旬にもかかわらず最速157キロ(中継テレビ局のスピードガン)の剛速球で2回1安打無失点。4者連続奪三振と、圧巻の内容で強烈なインパクトを残した。

 ざわめきが、一瞬にして静寂に変わった。メジャー全30球団の関係者が詰めかけたバックネット裏。あいさつや雑談を交わしていた約80人が、一斉にスピードガンを構えた。視線はすべて、大谷に注がれた。「外国人は誰が誰だかわからないので」。本人は無関心だが、世界の野球界の中心に、日本人の若者が立っていた。

 期待を裏切らない衝撃的な“全米デビュー”を飾った。1回2死から一、二塁間をゴロで破られて唯一の安打を許したが、続く4番チェ・ジュンソクを空振り三振に仕留めると、2回は圧巻の3者連続三振。「いい緊張感でいけました。球場もきれいで、すごくいい気分で投げられました」。強烈な印象を残した。

 オフのテーマは、狙われても打たれない真っすぐを身につけることだった。投打「二刀流」ならではの感覚がある。「真っすぐを待っていて、真っすぐでファウルになることほど嫌なものはない」。打者・大谷の心理が、投手・大谷のヒントになる。「(ファウルを稼ぎ)2ストライクを取れればこっちのもの。もっと嫌がられるように高めていきたい」。この日の4つの三振はすべて直球がウイニングショット。変化球は交ぜたが、常にカウントを有利に進め、“みえみえ”の真っすぐでもバットにかすらせなかった。

 2回2死、7番キム・サンホから三振を奪った直球は、テレビ中継のスピードガンでこの日最速の157キロ。「初戦なので、これから上がってくると思う」。ピオリアキャンプ中の実戦登板は最初で最後。次回登板は17日の帰国後に予定されている。栗山監督は「アメリカという地で実戦に向かえる中で、あいつの持っている本能的なものに触れる感じがあった」と評価した。衝撃の4年目初登板は、世界一へ駆け上がる第1歩でもあった。【四竈衛、本間翼、木下大輔】

 ◆大谷の投球内容 全25球の内訳は直球18、フォーク5、スライダー1、カーブ1。直球は3番打者に右安打されたが、相手がスイングした15球のうち空振り、ファウルが12球あった。7人目を空振り三振に仕留めた最後の球が、テレビ中継局GAORAの計測でこの日最速157キロ。日本ハムスコアラーのスピードガン表示は153キロ、メジャー関係者の計測では97マイル(約156キロ)だった。