元子役が社会人デビューを待つ。社会人野球のJABA長野大会は22日に開幕する。16年初の公式戦を迎える日本製紙石巻(宮城)は、右横手投げの大卒ルーキー、米谷(よねや)真一投手(22=城西国際大)が登板に備えている。03年の北野武監督兼主演の映画「座頭市」やドラマ、CMなどに出演した異色の経歴を持つ。チームの主役への「ドラマ」がクランクインする。

 かつて大物俳優と共演した元子役が、社会人野球の舞台に立つ。「投げやすい。バックが堅いですから」。大学よりレベルの高い守備が打たせて取るタイプの米谷に合う。元早大監督で城西国際大・佐藤清監督(60)の勧めなどもあり、日本製紙石巻入り。「社会人でやりたいと思っていた」と、長野大会を待ち望んでいる。

 物心ついた時から役者の道を歩み「東京児童劇団」に所属した。映画「座頭市」では冒頭のシーンで、悪者に絡まれたところを北野武に救われた。主人公の友人役として菅原文太、天海祐希らと共演した07年の映画「バッテリー」が代表作。9回2失点完投で初出場の城西国際大に全国1勝をもたらした、昨年の全日本大学選手権では、元子役として話題になった。

 06年の中学1年夏に「野球がやりたくて」と、「バッテリー」撮影終了と同時にスターの道を断念した。子役時代はNGを出して、共演者らに迷惑をかけたが、野球は撮り直しがきかない。「大舞台で自分の力をしっかり出せる。精神面で生きているのかも」と、役者魂は今でも力になる。

 最速141キロを誇り、オープン戦は主に先発を任された。伊藤大造監督(49)は「打者との駆け引きとかゲーム勘がいい。そんなに大崩れしない」と評価する。長野大会は4日間で最多5試合を戦い、予選リーグ3試合が組まれ登板の可能性は高い。エース左腕斉藤侑馬(27=武蔵大)ら先発3投手の中に「割って入りたい」と意気込む。子役から日本製紙石巻の主役へ、テーク1だ。【久野朗】

 ◆米谷真一(よねや・しんいち)1993年(平5)8月5日、東京都江戸川区生まれ。小学3年時から投手として野球を始める。駿台学園では2年夏の東東京大会4回戦が最高。城西国際大では1年秋からベンチ入りし、千葉県大学リーグ通算18勝。3年秋にMVP。最速141キロの速球のほかスライダー、シンカーなどを投げる。180センチ、82キロ。右投げ右打ち。