阪神に、また「プロ初」を記録した若虎が加わった。14年ドラフト1位横山雄哉投手(22)が、今季初登板の中日戦で7回3安打無失点。打線の援護を受け、プロ初勝利を挙げた。ケガやアクシデントを乗り越えた反骨の左腕が、チームのナゴヤドームでの今季連敗を4で止め、借金危機回避に導いた。

 待望の瞬間に、端正な顔が崩れた。横山がベンチから飛び出してハイタッチの列に加わる。プロ初勝利で、初体験のヒーローインタビューだ。「長かったですけど、今はすごくホッとしてます。緊張はしましたけど、何とか抑えることができてよかった」。素直な思いがあふれた。

 躍動感たっぷりだった。スライダー、カーブに加え、フォークボールの握りに近い独特のチェンジアップ。金本監督が「打者目線でもすごく嫌」と驚いたように、同じ腕の振りから投じられる変化球は威力抜群。4回、先頭荒木にこの試合初ヒットとなる右翼線二塁打を許したが、1死二塁から4番ビシエドをチェンジアップで空振り三振。チームの天敵も完璧に封じた。

 即戦力と期待されながらプロ1年目は4試合で0勝2敗、防御率6・75。昨年11月の秋季キャンプではトレーニング中に右足を骨折。松葉づえ姿でキャンプ地を後にしていたが、反骨の男が今季初マウンドで存在感を示した。

 「原点」と言える試合がある。高校2年時のセンバツだ。初戦の日大三(東京)戦で7回0/3を投げ、18安打13失点。「上には上がいると思いました。でもそういう人たちに負けたくないと思った」。公立校の2年生エースは、野球のエリート集団に歯が立たなかった。その時の相手の1番打者がのちにチームメートになる高山だった。

 選手寮でテレビ画面に映る高山の姿を見つめた。面白いようにヒットを重ねる黄金ルーキーを見てあの時の思いがよみがえった。負けたくない-。横山の奮闘で、チームは今季ナゴヤドームの連敗が4でストップし、借金危機も回避。「次があればまたしっかりと準備したい」(横山)。今後、1度出場選手登録を外れる見込みだが、ローテの谷間に花を咲かせた左腕に、再びチャンスは訪れるはずだ。【桝井聡】

<横山雄哉(よこやま・ゆうや)アラカルト>

 ◆生まれ 1994年(平6)2月21日、山形県。

 ◆球歴 長崎小2年で野球を始め、中山中では「中山ベースボールクラブ」。山形中央では2年春夏の甲子園でいずれも初戦敗退。

 ◆実績 新日鉄住金鹿島に進み、14年都市対抗で5者連続奪三振。U-21侍ジャパンに選出され、14年11月のU-21ワールドカップで3試合に投げ10回で20三振を奪い準優勝に貢献。

 ◆2軍キャンプ 1年目の昨春は左胸鎖関節の炎症、今春は昨年11月末に右足第5中足骨固定手術を受けた影響で2年連続の2軍キャンプを過ごした。

 ◆好きな食べ物 オムライス。

 ◆サイズ 183センチ、84キロ。左投げ左打ち。