広島田中広輔内野手(26)が好走塁で1点を先取した。4回に死球で出塁。その後田中は三塁まで進み、後続もつないで1死満塁となった。打席にエルドレッド。138キロを遊撃後方へ打ち上げると、バットをたたきつけた。それほど手応えのない浅い打球だった。

 しかし田中の判断は違った。センター方向へ強く吹く風を見ていた。高く上がった打球に、DeNAの遊撃倉本と左翼筒香が一瞬目を合わせた。倉本が譲ると、筒香が急ぐ。風にもあおられていた。田中はすぐに三塁へ戻り、タッチアップに備えた。

 筒香はふらつき、体の前にグラブを出しながら捕球。その体勢を確認すると田中は猛然とスタートを切った。慌てた筒香のバックホームは三塁側にそれた。田中は体をよじらせながら、最後は手でホームベースを払った。まさかの犠飛だった。浅い位置からのタッチアップに、球場全体がざわついた。広島が目指す機動力野球が出た先取点だった。「体勢も悪かったし、河田コーチもゴーと言ってくれた。よかったです」と振り返った。