大谷弾で、鷹の背中をとらえた。日本ハム大谷翔平投手(22)が、楽天戦で1点を追う6回1死三塁、辛島から右中間スタンドへ逆転の17号2ランを放った。「3番DH」でスタメン出場し、7試合ぶりの1発。右手中指のマメの影響で投手での登板は見送られているが、打者でバッチリ貢献だ。首位ソフトバンクがサヨナラ負けを喫し、最大11・5ゲーム差から2ゲームに肉薄した。

 大谷はモヤモヤ感を胸にしまってバットを振った。1点を追う6回1死三塁。カウント3-1からの5球目、楽天辛島のスライダーをたたいた。「入ってくれと思って走っていました」。右中間スタンドへの決勝の逆転17号2ラン。淡々とダイヤモンドを回った。笑みはないが、大きな1勝をたぐり寄せる1発だった。

 試合前に投手としてブルペン入りしたが、状態は思わしくなかった。捕手を座らせて投じた約30球は全力投球ではなかったという。調整として明日16日からのオリックス3連戦(札幌ドーム)で中継ぎ登板する案もあるが、吉井投手コーチは「そこで投げるのは現実的ではない。(投げなければ先発は)あり得ない」。試合後のヒーローインタビューで大谷は「早く投げられれば、うれしいと思います」と話したが、21日ソフトバンク戦(同)も登板回避する可能性が出てきた。

 試合後も、笑みはなかった。足早にバスに乗り込む直前、決勝アーチについて問われても「たまたまです」と、言いながら足を止めることはなかった。野手として18試合連続出場も右手中指のマメに端を発して投手としては休業状態。マメがつぶれた直後は、周囲に「僕、抹消ですかね?」と問うたが、チーム関係者にバットを振るしぐさとともに「お前には、こっちがあるだろ」と言われたという。気持ちを切り替えながら、うまく進まない投手に対する複雑な思いを封印しながら、バットで結果を求める日々が続く。

 試合終了から35分後。首位ソフトバンクが負けた。ゲーム差は2となり、ようやく1カードでひっくり返せるところまで来た。大谷だけでなく、9回の中田のバント阻止のビッグプレーやリリーフ陣の奮闘もあった。栗山監督は「ひっくり返せてたことも大きいけど、守り勝てたということ」と、うなずく。厳しい戦いを続ける中で、大目標が確実に近づいてきた。【木下大輔】