痛みに耐えながら、大きなアーチを描いた。日本ハム陽岱鋼外野手(29)が初回、35試合ぶりの本塁打でグイッと主導権を奪った。1点を先制した直後の2死一、二塁。スタンリッジの148キロを、逆らわずにミートした。「何とか強い打球を打とうと思っていた」。ライナー性の打球が右翼席へ届く。必死な思いが、7月8日ロッテ戦(札幌ドーム)以来の放物線となって形に表れた。

 覚悟を持ってグラウンドに立っている。「今は祈るしかない。これ以上、悪くならないことを」。ちょうど1週間前だった。16日オリックス戦(同)の6回の守備。左中間への大飛球をフェンスにぶつかりながらジャンピングキャッチ。スーパープレーの代償として右肘と右胸を負傷した。

 打撲のため、患部は熱を持っている。温めると血行が良くなり、熱が冷めない=治りにくくなることから「お風呂にも入れない」。試合後の湯船でリラックスすることがルーティンだが、今はシャワーで我慢する。「でも、やるしかないんで」。17日以降の6試合で19打数7安打で打率3割6分8厘、1本塁打に5打点。痛みを超える集中力で、逆転優勝へ肉体をフル稼働させている。

 再び首位ソフトバンクとのゲーム差は「マイナス0・5」と肉薄した。「そこは関係ない。僕らが、しっかりやればいい」。満身創痍(そうい)の中で、主力の自覚が体を突き動かす。今季初の奪首へ、休むことなく突っ走る。【木下大輔】