しぶとい一打が虎猛攻の幕開けとなった。DeNAとの負けられない一戦の1回1死満塁。原口文仁捕手(24)が、チームが苦手とする井納から先制V打だ。低めの変化球をすくい、左前に運ぶ技ありのタイムリー。チーム2シーズンぶりとなる初回5点の攻撃を呼び込んだ。

 25分にも及んだ初回の攻撃に火をつけたのは原口だった。1死満塁。追い込まれてもファウルで粘った6球目だった。DeNA先発井納の127キロの外角フォークに身を乗り出し、最後は左手1本で食らいついた。打球は三遊間を真っ二つ。執念の一打で三塁走者の上本が生還し、流れを呼ぶ先制点をゲットした。

 「最初に回ってきたので、なんとかしようと。追い込まれてましたけど、週の初めにいい流れをつくれました」

 満塁時での今季成績は打率5割5分6厘で11打点の勝負強さ。この打席もおいしいところを逃さなかった。原口の先制打を口火に4者連続で打点を挙げ、打者11人で5得点。初回に5点を取ったのは2シーズンぶりで金本阪神初だった。

 チームは井納に今季3試合対戦し、防御率0・78と抑え込まれていた。原口自身、6打席ノーヒットと打ちあぐねていた。「それもありました。東京ドームでも、よくない方向にいっていたけど、しっかりリセットできました」。21日の巨人戦は4打数無安打。そして迎えた苦手を前に、前日は完全静養に努め、臨戦態勢を整えた。2打席目以降は中前打と中犠飛で2安打2打点。手も足も出なかった相手を3打席ともかもにした。

 グラウンドを離れても頼もしい存在だ。遠征先では1学年下の島本らの後輩投手を食事に誘うことが多い。そこでは得意球を聞いたり、自身の視点でクセを教えたりする。積極的にコミュニケーションを取ることで、投手陣の底上げを図っている。4月に育成契約としてはい上がってきたが、チームの中心選手として自覚も芽生えてきた。

 金本監督も絶賛した。初回に5点を呼んだ先制打について「あれが今日の勝因でしょう。追い込まれた後、粘って粘って、球際で食らいついて持っていった。チームとしても大きかった。チャンスで原口は集中力を出すからね」。頼りがいのある打棒に、指揮官の信頼も高まるばかりだ。【山川智之】

 ▼阪神が初回に5点以上挙げたのは、14年7月1日ヤクルト戦(倉敷)の7点以来。1イニング5点以上は7月28日ヤクルト戦(甲子園)の5点(5回)以来。今季は1イニング5点が5度、9点(7月27日ヤクルト戦=甲子園)が1度。球団の1イニング最多得点は69年5月27日サンケイ戦(神宮)6回の13点でセ・リーグ記録。

 ▼先発全員安打は7月24日広島戦以来、今季2度目。先発野手の全員安打は今季5度ある。2桁安打は今季38度目で28勝8敗2分け。