立正大の最速153キロ右腕・黒木優太投手(4年=橘学苑)が、今秋初先発の東農大戦で8回を4安打9奪三振1失点に抑えた。5月の試合中に一塁ベースカバーで走者と接触して右肩を脱臼。調整が遅れていたが、2部リーグのドラフト1位候補が9球団のスカウトを前に完全復活を証明した。

 黒木が、不安を一掃すると同時に進化を見せた。初回2死一、三塁のピンチで、左打者への外角直球で見逃し三振。「今までは浮くこともあった直球が、低めにまとまった」。5回の失点は打ち取った飛球が左前に落ちて適時打となり、外野への鋭い打球は3本だけ。直球は楽天のスピードガンで最速150キロを記録した。復帰後最長の8回を99球で投げ終えた右腕は「最初から100%で、行けるところまでいった。最後は気力を振り絞った」と汗をぬぐった。

 常時145キロ前後の速球に加え、縦に鋭く落ちるスライダーで圧倒した。ホームベース手前でワンバウンドしても、打者のバットは空を切った。ドジャース前田を参考にした横のスライダーは、右打者にとっては背中から曲がってくる。さらに「カーブを使えるようになって、奥行きが広がった」。今夏の調整期間で、直球との球速差約30キロの緩急も身につけた。

 1年秋から先発を任されるが、1部のマウンド経験はない。それでも、昨秋ドラフトで東都2部から1位指名されたオリックス吉田正(青学大)ヤクルト原樹(東洋大)と好勝負を繰り広げた。オリックスは5月に上位候補としてリストアップ。13日の復帰登板も9球団が訪れ、この日は阪神や西武などの編成トップが視察した。DeNA武居スカウトは「去年、原との投げ合いも見た。黒木のほうが上だろう」と話した。

 プロ志望届は来週にも提出する予定。高校では指名漏れの悔しさを味わった。「今日(の出来)は50点。もっと良くなっていけると思う」。黒木の猛アピールが始まった。【鹿野雄太】

<黒木優太アラカルト>

 ◆生まれ 1994年(平6)8月16日、横浜市

 ◆身長、体重 179センチ、78キロ

 ◆投打 右投げ左打ち

 ◆球歴 小2で野球を始め、ポジションは外野手兼投手。日吉台中では港北シニアに所属し、2年時に軟式野球へ移る。橘学苑では1年秋から遊撃手としてベンチ入り。2年秋から投手に転向し、3年春に背番号「1」。最速146キロで注目されたが、最後の夏は県大会3回戦で東海大相模に敗れた。立正大では1年秋からベンチ入り

 ◆最速 今年3月に最速153キロ

 ◆球種 横、縦のスライダー、カットボール、カーブ、フォーク、チェンジアップ

 ◆参考にしている投手 オリックス金子。「動画で見て、体重移動の仕方を研究した」

 ◆好きなアーティスト 倖田来未

 ◆好きな芸能人 中村アン

 ◆好きな食べ物 オムライス

 ◆特技 掃除

 ◆趣味 釣り。オフの日に時間を見つければ、海のない埼玉から繰り出す