「ボブ」の愛称でファンから親しまれたベテランが、18年間のプロ野球人生に別れを告げた。楽天川井貴志投手(40)が2日、コボスタ宮城で会見し、今季限りでの現役引退を発表した。

 悔いはない。ただ、もうプロ野球選手としての日常を過ごせないことが、少しだけ寂しかった。「もう、家でシャドウ(ピッチング)をしなくてもいいんだなと、何日か後に感じるんでしょうね」。背水の1年と決めて臨んだ今季、2年連続で未勝利に終わった。「全力で投げても思う球が投げられず、チームの戦力になれないと思った」。潔い引き際だった。

 新たな働き場所で、存在感を示した。06年にロッテからトレードで楽天に移籍。「07年と08年に勝てなくても、楽天球団は僕を残してくれた。何が何でもやってやろうと思った」。プロの世界は結果が全てと自分に言い聞かせ、毎試合100%の状態でマウンドに上がるために、体のケアや準備には人一倍気を使った。

 毎試合が引退試合のつもりで投げた。星野監督時代には、ローテーションの谷間で好投し「困ったときのボブ」と信頼を得た。「いい状態の時に1軍に上げてもらい、そう言ってもらえて感謝しています」と、懐かしむように語る。

 夢の続きは後輩たちに託す。「13年の日本一は、若いチームの成長を見られて幸せだった。プロの投手は勝たないと意味がない。執念を出して頑張ってもらいたい」とエールを送る。現在、楽天の球団スタッフなどの打診をされているが検討中だ。ボブは引退する。だが、その意志は今後もチームに生き続ける。【田口元義】