巨人高橋由伸監督(41)が大一番で不動だった山をついに動かした。

 勝ち越した直後の9回。マウンドに上がったのはリーグ最多セーブの守護神沢村ではなかった。8回から登板のセットアッパー、マシソンを最終回にまたがせた。

 今季ペナントでは1度も「ウチの形」とクローザーを動かさなかった。「勝つための最善」。沢村は8、9月に4度のセーブ機会を失敗し、前日のCS初戦でも2失点し、黒星を決定づけた。辛抱、非情という思いを一切取り払い、後がない状況で断を下した。

 助っ人も応えた。8回はシーズンから巨人戦で3戦連発の筒香と梶谷、4戦連発のロペスを3者凡退でねじ伏せた。筒香は150キロ超の直球を連発し、最後は高め直球で空振り三振。ベンチに戻り「どのような展開になっても(9回は)行く、と言われた」と初めてクローザー交代を悟った。

 9回は2死から安打を許し、代打下園に強烈なファウルを打たれた。尾花投手コーチもベンチから飛び出し、マウンドに輪ができた。「みんなには『アグレッシブに腕を振っていこう』と。阿部には『打者に集中していこう』と言われた」。鼓舞された臨時守護神が反撃を断ち切り、チームを徳俵で踏みとどまらせた。「僕の中で沢村がクローザーというのは変わらない。ただ時々、自分が助けになれれば」と勝利の方程式の相棒を思いやった。

 シーズン中は不動の姿勢を貫いてきた指揮官がポストシーズンに入り、短期決戦で策を打ち続けている。1番坂本、3番村田の打線改造、この日は守護神を代えた。「(交代は)今日において」と話した上で今後も選択肢にあるかと聞かれ「そうなると思う」と示した。1勝1敗の剣が峰の戦い。「後がないのはお互いさま。残すことなく、ある力、すべてを出して戦いたい」。妥協なき一手を打ち、ファーストステージを制す。【広重竜太郎】

 ◆巨人の今季セーブ 今季の巨人は41セーブを記録したが、内訳は沢村37、マシソン1、戸根1、土田1、山口1。マシソンは3月31日DeNA戦、戸根は4月1日広島戦、土田は同3日広島戦で挙げたが、3人とも沢村が登板後の延長戦で記録(勝利投手は沢村)。沢村以外で9回に登板してセーブを挙げたのは6月4日日本ハム戦の山口だけ。この時は5連投中の沢村を休養させるために、山口が投げた。