ジレンマに耐え、やっと兵が躍った。日本ハム栗山監督が組みっぱなしだった両腕をほどき、力強くたたく。選手たちを、大拍手で出迎えた。興奮のハイタッチで、たたえた。「うちらしい感じが少しずつ出始めた。非常に、うちらしかった」。1点を追う8回に勝ち越し、延長10回に大谷の快打でサヨナラ勝ち。2連敗した敵地では影を潜めていた攻撃のつながりがようやく形になった。

 果敢に動き、眠る手駒を揺さぶった。第2戦まで適時打なし。スタメンから2戦6打数無安打の陽岱鋼を外した。3年目、勢いのある岡を抜てきし、5番に配備した。選手1人1人に試合前、駆け寄った。耳打ちした。胸に秘めた信頼の思いを、ストレートに伝えた。レアードには「あなたが打ってくれると盛り上がる。お願いだから、打ってくれ」と懇願もした。

 逆襲への布石を打った。「明日(26日)から地に足を着けて戦う」。連敗スタートで失意の広島から前日24日、生活拠点を置く栗山町へ戻った。白鳥の親子を見た。「そういう時期に試合をするなんて、なかなかなかった。幸せだね」。スイッチを切り替えた。激闘を制し、手塩にかけた若手たちが羽を広げた。逆転日本一へ、息を吹き返す1勝を手にした。【高山通史】