プロ初勝利よりプロ1号!? 広島ドラフト1位の加藤拓也投手(22=慶大)が5日、横浜市内の慶大グラウンドで自主トレを公開した。「初勝利」には興味を示さなかったが、慶大時代はリーグ戦で3本塁打を放ったスラッガー。プロでの初打席はフルスイングを誓った。

 分厚い胸板に、この冬強化している太い両腕。ウエアがはち切れそうなほどの尻、太もも。身長175センチと上背はないが、加藤の体は大きい。約60メートルのキャッチボールでは、ヤクルト小川に似たフォームで重たそうなボールを投げ下ろした。放たれるパワーは、最速153キロの直球だけに生きるわけではない。大学通算3本塁打。野手顔負けの力強い打撃も恩恵を受ける。

 「全部リーグ戦で、左翼スタンドでした。自信はまったくないです。当たらないですけど、当たれば飛ぶ方かもしれません」

 恥ずかしそうに思い出したが、この男、プチ二刀流だ。昨年9月17日の東大戦ではリーグ24人目のノーヒットノーランを達成。その試合の6回に左翼へ2ランを放ち、6大学初の「ノーヒッターと本塁打」の離れ業。プロでも達成すれば67年巨人堀内、73年阪神江夏以来3人目となる。「まずは苦手なバントです」と頭をかくが、「振れるなら、思い切り振りたい」とフルスイングを誓った。

 本業の投球では野性味たっぷりのスタイルで挑む。変化球はフォークとスライダーだけだが、「まずは持っているもので。壁にぶち当たったら増やすかもしれない」。道具へのこだわりもない。「何でも結果を出せるように。執着し過ぎると足かせになるので」ときっぱりだ。プロ初勝利さえも「勝利は自分からアクションを起こせない。僕自身はゼロで抑えること。目の前の打者です」と執着がないのが頼もしい。

 新年は3日から始動し、体をつくってきた。初詣で引いたおみくじは「末吉」だったが、「中身は読んでません」とケロリ。新年の誓いは「健康で、ケガなく1年間活躍したい」と笑った。野性味と重量感をまとい、即戦力がプロの1歩を踏み出す。【池本泰尚】

 ◆加藤拓也(かとう・たくや)1994年(平6)12月31日、東京出身。慶応-慶大。東京6大学で通算26勝。最速153キロの本格派右腕。昨秋の東大戦でノーヒットノーラン。2度の最優秀防御率も獲得。持ち球はスライダーとフォーク。50メートル6秒5、遠投115メートル。175センチ、90キロ。右投げ右打ち。

 ◆広島の投手本塁打 通算最多は北別府とルイスの5本。シーズン最多は64年大石清と09年ルイスの3本。日本人のシーズン2本塁打以上は最近では01年高橋建の2本。最近のルーキーイヤー本塁打は99年の広池。開幕戦で本塁打を放った投手はセ・リーグでは5人で7度。広島では80年に池谷が放っている。