プレーバック日刊スポーツ! 過去の3月15日付紙面を振り返ります。2007年の3面(東京版)は進学する早大のキャンプに参加していた早実・斎藤佑樹投手(現日本ハム)が紅白戦で好投した様子を伝えています。

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 佑ちゃんがモヤモヤを吹き飛ばす快投を演じた。早大キャンプに参加中の早実・斎藤佑樹投手(18)が14日、初の実戦となる紅白戦に紅組の先発で登板。キレのある直球とスライダーを低めに集め、3回を1安打無失点、2奪三振に抑える完ぺきな“大学デビュー”を果たした。現役部員の裏金騒動で揺れる早大に、一筋の光明が差し込んだ。

 緊迫感漂うグラウンドで、斎藤が「大学デビュー」のマウンドに上がった。周囲は騒々しい日々が続いている。それでも強い精神力が支えるのか。「力」と「技」で大学レベルで通用することを証明した。

 記念すべき第1球は外角低めのストレート。ストライクゾーンいっぱいに決まる抜群の制球で先頭打者・松永(新1年)を見逃し三振に仕留めた。この回14球中10球がストレート。真っ向勝負で3者凡退に抑え、確信をつかんだ。

 2回は真骨頂である「投球術」を披露。リーグ戦経験豊富な生島(3年)に対し、初球ツーシームから入るなど配球パターンをガラリと変えた。フォークも織り交ぜて、最後はカウント2-3から得意のスライダーで遊ゴロに打ち取った。相手や場面に合わせて配球を変える斎藤らしい頭脳派投球で、主力打者を手玉に取った。

 紅白戦ながら、3回をわずか1安打無失点と最高の“大学デビュー”。だが試合後のインタビューはなし。早大広報部を通じて「今日の出来は60点から70点くらい。低めに投げることを意識しました」とコメントを出した。早大の現役部員が西武から金銭供与を受けていた裏金問題が9日に発覚。以降、応武監督と部員全員が自主的にすべての取材を自粛した。キャンプ地の沖縄・浦添球場は連日、ピリピリしたムードに包まれていたが、斎藤の快投がそんなモヤモヤを吹き飛ばした。

 今日15日に早実の卒業式リハーサルに参加するため、この日キャンプを打ち上げ帰途についた。4日から初参加した、早大野球部の春季キャンプを振り返り、「いい点と悪い点が見つかって実りのあるキャンプだった。ストレートのキレが戻ったのがいい点で変化球の制球が課題」とした。体の開きが早くならないようテークバックで右腕の使い方をコンパクトに修正。6日間で1130球を投げ込み、精神的にもたくましさを増した。12日のフリー打撃登板を見守った巨人近藤総括ディレクターは「腕の使い方も気にならない。マウンドでの姿やフォームが素晴らしい」と絶賛した。

 早大史上初の1年春の開幕投手の可能性も出てきた。「(開幕投手の手応えは)今の段階では分からない」。ちょうど1カ月後の4・14東大戦。神宮のマウンドに斎藤が立っていることが、夢ではなくなってきた。

※記録と表記は当時のもの