プロでも甲子園に足跡を刻んだ。巨人岡本和真内野手(20)が、敵地でプロ初のマルチ安打となる2安打1四球の全打席出塁と暴れた。初回2死満塁から伝統の一戦で自身初めてのタイムリーとなる2点適時打を放ち、チームを勢いに乗せた。3試合ぶりのスタメン起用に一発回答。開幕から首位をひた走るチームは、貯金を再び5に戻した。

 懐かしの甲子園は岡本の味方だった。1点を先制して、なお初回2死満塁の絶好機。岡本が「試合に使ってもらった。積極的にいかないと」と岩貞のカットボールを振り抜くと、地をはうゴロが三遊間のど真ん中を抜けていった。甲子園の1軍戦では、オープン戦も含めた4試合11打席目で、ついに初安打が出た。3試合ぶりのスタメン起用に応えた「伝統の一戦」で初適時打。15年9月以来2シーズンぶりの打点でもあった。

 思い出の場所に愛されていた。5回にも中前打を放ち、プロ初のマルチ安打とバットが止まらない。智弁学園(奈良)の14年センバツで1試合2本塁打と大暴れした舞台で躍動が続いた。「あの時とは別物です。プロは何もかもが全然違う。ただ、阪神との試合は、何でか分からないんですが気合が入ります」と、感傷に浸る余裕はない。直前まで3試合、9打席連続ノーヒット。ただ必死に、高校球児のように目の前のボールに食らいついた結果だった。

 本人が意図していなくても、甲子園が再び浮上するきっかけとなった。DeNA戦を翌日に控えた3日、横浜のナイター練習直前。バットを片手に夕方のグラウンドを見つめながら、誰に伝えるでもなくつぶやいた。「春の夕暮れって、なんだか悲しくなりますよね。最初は明るいのに、だんだん暗くなるんだなって…」。3年目の今季は初の開幕1軍スタート。開幕戦でいきなり安打を放つも、以降は3試合連続無安打でベンチスタートが続いていた。時に弱音にも似た言葉が口を突いて出たが、この日は2安打1四球の全打席出塁。本来の明るさを取り戻し、5回に代走を送られベンチへと下がった。

 1割を切りそうだった打率が再び2割5分に乗った。高橋監督は「(適時打は)チームにとっても大きいし、本人にも自信になれば」と期待を伝える。高校時代の聖地を、浮上のきっかけにする。【松本岳志】