伊予ゴジラが投げて打って今季初勝利だ。阪神秋山拓巳投手(25)が7回途中10安打を浴びながら5失点の粘投。打っても4回に逆転を呼ぶ千金安打を放つなど、攻守で光り輝いた。先発の早期降板が相次ぐ中、2試合連続虎投最長タイの6回0/3を投球。ルーキーイヤーの10年に4勝を挙げて以来、1軍の壁に跳ね返されてきた右腕が、いよいよお目覚めモードだ。

 7回に秋山がマウンドを降りると、左翼席から惜しみない拍手が送られた。それが答えだった。7回途中を5失点(自責点4)。10安打も浴びた。数字はそこまで良くないかも知れない。それでも、懸命に腕を振り、粘りの投球で、背番号46での初勝利を挙げた。

 「序盤から苦しいピッチングになってしまいましたが、中盤以降は梅野のリードに応えることができましたし、野手がたくさん点を取ってくれたので思い切って投げることができました」

 初回は3者凡退に抑える完璧な立ち上がり。しかし、2回に捕まった。内角の直球を狙い打たれて3失点。それでも、ここで踏みとどまるのが今年の秋山だ。3回以降は一転して100キロ台のスローカーブを中心に投球を組み立てた。4回から3イニング連続3者凡退に抑える力投。7回に連打を浴び降板となったが、2試合連続で6イニング以上を投げ切り、先発の役割を見事に果たした。

 同世代のスターたちの存在が、秋山を奮い立たせている。特にこの日対戦したDeNA4番の筒香には強いライバル心を持っている。「同じ年でほんとすごいと思うよ。でも、負けたくない気持ちはあるけん。自分だって追いつけるように頑張っていかんと。東京五輪で一緒にやれたらええけどね」。この日は第1、2打席で2安打を許したものの、3打席目は左飛に打ち取った。今はまだはるか先にある背中。それでも、もがきながら必死に追い続けている。

 打撃でも4回、同点に追いついた直後の2死一、二塁で今永から右前打。愛媛・西条高時代に“伊予ゴジラ”の異名を取った自慢の打撃で、一挙6得点の猛攻を呼び込んだ。打っても投げても存在感を示した背番号46。親交があり、先日、女優佐々木希との結婚を発表した、お笑い芸人のアンジャッシュ渡部にもしっかり勝ち星を届け「僕も頑張ります」と笑顔をみせた。昨年4年ぶりの勝利を挙げて心機一転の17年。今年はひと味違う。【梶本長之】