楽天ゼラス・ウィーラー内野手(30)が、土壇場で本領を発揮した。1点を追う9回2死一、二塁で、日本ハム増井から中前へ貴重な同点打を放った。今季初打点に加えて初の猛打賞。打率1割台に低迷する主砲に当たりが戻ってきた。チームも、本拠地初登板の岸孝之投手(32)が6回3失点と粘り、延長10回には、聖沢諒外野手(31)のサヨナラ打で3連勝。リーグ最速での10勝をマークした。

 打った瞬間に、ウィーラーが人さし指を天にかざしながら一塁ベースに走った。2-3の9回2死一、二塁。打ち取られれば敗戦の窮地で、日本ハム増井の、内角を鋭く突く151キロの速球に差し込まれながらも中前に運んだ。「なんとか打ちたいと思っていたので、いい結果になってよかった。とてもいいヒットだった」。今季初打点。4回と6回にも安打を放っており初の猛打賞と、チームの主砲がようやく目覚めた。

 昨年はチームトップの27本塁打、88打点をたたき出し、今季も首脳陣から打線のキーマンに挙げられた。だが、開幕から不調に苦しみ、試合前の段階では打率1割3分7厘だった。それでも「まだ10試合を過ぎたばかり。シーズンは長いから全く気にしていない」と前向きな言葉を口にしてきた。14日の試合後に梨田監督と面談した際には3番からの打順変更の提案も受けた。ウィーラーは「私は監督を信じている」と答えた。その後も打順は変わらない。期待に結果でこたえてみせた。

 梨田監督が「外国人のキャプテン」と評するムードメーカーだけに、打線への影響力は大きい。ウィーラーの初打点で延長に持ち込むと、もう勝ちムードだった。延長10回裏1死一、二塁から代打の聖沢にサヨナラ打が出て、3連勝を決めた。梨田監督は「粘って、いいプレーをしてくれた。こういうゲームを取ったのは大きい」と、劇的な勝利を喜んだ。

 ウィーラーは3安打を放っても打率1割8分2厘と2割に届いていない。ただ、梨田監督は「ウィーラーが当たってくるとチームが元気になる。2倍、3倍明るくなる」と、今後への期待感をにじませた。本塁打も打点も、ここから量産してみせる。チームを優勝に導く。