広島は連敗しない! 1点を追う9回、同点としてなお1死二、三塁。会沢翼捕手(29)が中前へサヨナラ安打を放った。選手会長の小窪を皮切りにナインが飛びついてきた。会沢は両手を突き上げて喜んだ。「バットに当たればと思った。バットに当たれば何かが起こる。ことを起こそうと思った」。試合前まで打率1割台の男が、今季初の連敗を阻止するヒーローになった。

 開幕から8試合連続無失点で新守護神に昇格したばかりのDeNAパットンに襲いかかった。先頭新井の安打に鈴木も続く。無死一、二塁からエルドレッドが同点打を放つと、小窪が犠打でつないで、昨年から選手会副会長を務める会沢が仕留めた。

 チームを陰で支えてきた。例年の約3倍となる19選手が参加した昨年11月の由布院リハビリキャンプでは、解散2日前に全選手での入浴を提案したのは会沢だった。裏方も含め、温泉はぎゅうぎゅう詰めだったが、ベテラン新井も、若い鈴木もみんな笑っていた。期間中、毎日全選手で食卓を囲んだのは過去に例がないと宿の担当者も驚く団結ぶり。リーグ優勝した昨季以上にまとまっている。

 興奮冷めやらぬ中、緒方監督は表情を引き締めていた。「会沢は本当によく打ってくれた。みんなを救った一打だった。今日は反省の多き試合。攻撃に反省があった。勝利に浮かれていないで、しっかり反省して欲しい」。劇的勝利にも足もとを見つめる。今年の広島も、強い。【前原淳】