広島安部友裕内野手(27)がタッチをかいくぐる「神走塁」をみせた。2回。一塁走者で一気に本塁を狙い、最後はDeNAの捕手戸柱のタッチをかわし、左手でホームを触った。春季キャンプから繰り返してきた練習を、瞬間の判断で実践。チームは投手陣が失点を重ねて敗れたが、勝負どころで生きてくるはずだ。

 安部には見えていた。最後の最後で、DeNAの捕手戸柱のタッチをかわした。2点を追う2回だ。右前打で出塁し、安部は一塁走者。打席には8番石原が立った。2ボールからの3球目を石原が右中間へはじき返すと、安部がスタートを切った。打球がフェンスに当たる音を、二塁ベースを蹴ったあたりで聞いた。三塁の河田外野守備走塁コーチのシグナルに応じ、速度を緩めずに走った。

 「打球を見過ぎてスタートが少し遅れた。取り返そうと思って。河田コーチが回すなら行けるんだと信じて走りました」

 一気に三塁も蹴った。だがDeNAの連係プレーも決まっていた。捕手戸柱はボールを持って安部の突入を待つ状態だった。だがここで、ポテンシャルが発揮された。1度フェアグラウンド側に体を傾けるフェイントを仕掛けた。そしてすぐさま左手を残してファウルグラウンドにスライディング。ベース上のわずかな隙間をさわり、戸柱のタッチをかいくぐった。球審森の両手は横に広がった。リプレー検証も行われたが、判定通りで得点が認められた。足でもぎとった。

 「捕球体勢に入っていた。普通に入ったらダメだと。最後にパッと触ろうと思った。キャンプのスライディングを実践出来た」。打っても「後ろにつなげるという意識だけを持って」打席に入り2安打を放った。6回には丸のソロの後、鈴木、松山、エルドレッド、安部と連打。あと1本のところまで攻めた。緒方監督は「惜しかったね。継投で踏ん張られて、ストップされた」と残念がった。チームは敗れたが、DeNAバッテリーのなかに今季も継続して足攻めが出来ることを植え付けたのは間違いない。【池本泰尚】