かつての盟友も、敵となれば容赦はしない。楽天戦7回裏1死。西武中村は楽天先発岸のこの日最速149キロ直球を、バックスクリーン左に運んだ。チェンジアップの連投で追い込まれていたが「ストレートに合わせていました。打った感触は完璧」。打球は天井とスタンド最上部の間の空間を抜け、場外へと消えた。

 チームはそれまで、昨年まで西武投手陣の大黒柱だった岸に、ほぼ完璧に抑え込まれていた。ゴールデンウイークの大観衆も、静かに試合を見守るしかなかった。それが主砲の1発で、空気が変わった。続くメヒアも初球チェンジアップを左翼席へ。ためていたフラストレーションを爆発させるように、観客席から歓呼の声と、逆転を期待する大声援が湧き起こった。

 そんな機運を生かせず、その後のチャンスを逸し、チームは敗れた。中村は「まあ、負けてしまったら何ともね」とため息をついた。それでも、初打席の左前打と合わせ、3打数2安打1本塁打と、初対戦の岸を打った意味はある。

 14年。やはり西武からFAでロッテに移籍した涌井との初対戦で、中村は同じように初打席で安打、第3打席で本塁打を放った。その後、昨季までにかつてのエースを40打数13安打で打率3割2分5厘、本塁打6本と打ちまくってきた。

 中村は「そういうのはあります。今日、岸のストレートを2本打った。次からはそれも踏まえ、いろいろな球種での勝負になるでしょう」とうなずいた。この日のリーグトップに並ぶ9号ソロで通算916打点とし、清原和博を抜いて球団歴代単独1位になった。そして何より、新たな好敵手にきっちりと「立ち合い勝ち」した。【塩畑大輔】