気迫の3勝目だ。広島九里亜蓮投手(25)が6回3安打1失点で勝利を運んだ。6回には2死満塁のピンチを背負うも、最後は代打村田を遊ゴロに抑えてしのいだ。試合前には黒田流の「九里ノート」を確認し、抑え方をイメージ。緻密な準備も粘投のスパイスだ。3カードぶりの勝ち越しで、首位阪神との1・5差を守った。

 グラブを激しくたたき、九里がほえた。同点の6回2死満塁。打席に巨人村田。ここで打たれれば、これまでと同じだ。九里はギアを上げた。カウント1-1からの3球目。この試合102球目に気持ちを込めた。「逃げずにゾーンのなかで攻めよう」と決め、外角いっぱいの137キロのカットボール。強い打球だったが、遊撃田中の正面だ。気迫で封じ込めた。

 ピンチの招き方は悪かった。先頭重信を菊池の失策で出した。2死三塁までいったが、マギーと代打亀井を連続四球で歩かせた。しかしこれまでとは違った。「勝負するなかで、低めに集まっての四球。気持ちをしっかり切り替えられた」。要所を締めたことで打線にも勢いを与え、勝ち越し点をもらった。6回3安打1失点で4月9日ヤクルト戦(マツダスタジアム)以来の3勝目を手にした。

 アウトプットの作業があったから落ち着けた。引退した黒田博樹氏にならって始めた「九里ノート」。今までは自分のためだけだったが、この日の試合前のバッテリーミーティングで初めて自分の考えを述べた。畝投手コーチに促され、自分でつけたチャート表を出した。各打者の攻め方を確認し、捕手会沢と意見を交換。頭へのインプットだけだった情報が、整理された。

 心底熱く、負けず嫌い。投前のゴロを失策すれば、遠征先で畝コーチの部屋をたたき、練習前のノックを志願したこともある。準備の気持ちで乗り越えた右腕に、緒方監督も「5、6回で継投というのは頭に入れてはいた。でも今日の九里は内容もよかった。気迫というか、気持ちで抑えきったというところ。言うことはないです」と絶賛した。大歓声にも後押しされて3カードぶりの勝ち越し。首位阪神との1・5差もキープした。もう1度、コイの季節が始まる。【池本泰尚】