<広島4-3横浜>◇3日◇広島

 この雰囲気で負ける気がしない。広島が横浜を4-3で下し、連勝を3に伸ばした。今季初めて大入りが出た広島市民球場はお祭りムード。お立ち台には投げて打っての高橋、そして天谷が上がった。ほしいところで2本の適時打。ここ数試合は影を潜めていたが、バットに精気が戻り、お約束のマイクパフォーマンスも披露した。ちょっとベタだが、さあコイの季節です-。

 インタビュアーも空気が読める人だ。お立ち台の選手紹介で高橋とともに天谷の名前がコールされると、2万6780観衆はひときわ盛り上がった。その空気を察して「天谷さんのお立ち台といえば、恒例の…」と振ってくれた。

 天谷

 どうも、僕です。今はゴールデンウイーク中です。お子さん連れのお父さん、お母さんは今日はお酒は飲まずお子さんの相手をしてあげてください。ありがとうございました。

 少しむちゃな振りにも動揺せず、今季3度目のお立ち台でお約束の「酒ネタ」を披露した。試合が終わってもほとんどの観客はスタンド残っていた。心から広島市民“劇場”のフィナーレを楽しんだはずだ。

 お立ち台より前に、すでに打席の中で天谷らしさを取り戻していた。5回2死から高橋の2ランで先制。たたみ掛けるように次の赤松が二塁内野安打で出塁し、二盗を決めた。ここで1点が入れば完全に試合の流れを引き寄せられる。その期待に天谷が応え、一、二塁間を鋭く破った。

 7回にはダメ押しとも思えた適時打を左前に運んだ。4-1だ。ここでも2死からのワンチャンスを生かした。結果的に1点差で逃げ切っただけに、大きな1点になった。

 内容があった。「(三浦は)追い込まれたら苦しいので、初球から積極的にどんどん打っていこうと思っていた」。適時打はともに最初のストライクだった。1打席目は初球から連続で見逃しストライクをとられて空振り三振。反省をすぐに生かした。

 4月11日以来、16試合ぶりの猛打賞。最近5試合で16打数1安打と当たりが止まっていたのがウソのよう。「これまで、少し細かく考えすぎていたのもあると思う。うまく打とうというか。だから、甘いのはとにかくガンガンいこうと」。打撃スタイル、プレースタイルの原点である「積極性」を取り戻した天谷はアンタッチャブルだった。

 「調子自体はそんなに悪くなかったけど、結果を出せずにチームの足を引っ張っていた。盗塁で二塁に行ってくれた赤松さん、ヒットを打った東出さん、バントを決めた山さん(山崎)とか、みんなに助けられましたね」。

 天谷だけでなく、赤松のチャンスメーク、東出の好守や出塁、山崎の犠打などクリーンアップのパワーに頼らない攻撃は見事だった。3連勝。力は着実についている。黄金週間が過ぎても鯉のぼりを押し入れにしまうつもりはない。【柏原誠】