<オープン戦:日本ハム4-3中日>◇15日◇東京ドーム

 怪物を大穴ルーキーが大逆転-。日本ハムの高校生ドラフト6巡目、豊島明好投手(18)の開幕1軍入りが15日、濃厚になった。4番手で登板し1回を無安打、無失点。開幕1軍なら日本ハムの高卒新人投手では79年工藤幹夫以来、29年ぶりの快挙を射程にとらえた。中学時代に両親を亡くしたが、それをバネに入団テストを経てドラフト指名。同期の中田翔内野手(18)の陰に隠れていたダークホースが、秘密兵器に急浮上した。

 人気お笑い芸人・ほっしゃん似の無名新人が、中田も、由規も飛び越えた。豊島の「一発快投」が、逆転劇の夢を大きく膨らませた。1軍合流翌日のこの日、1軍初登板。2点リードの7回、運命の出番で躍動した。「テンションが上がりました。自分がテレビの中に入ったみたいだった」。1四球は与えたが、言葉通り度胸満点に打者4人を無安打、無失点。「信じられないっす」。試合後に16日からの1軍帯同、札幌行きの切符が待っていた。

 真っ向勝負で指揮官のハートをぶち抜いた。中村紀ら日本一の中日打線に21球。うち15球が豪快な直球勝負だった。この日最速は140キロ。売り出し中の平田を高め139キロで空振りさせた。大卒2年目左腕コンビの宮本、山本が2軍降格。同じ左の中継ぎライバルを蹴落とす、力強さだった。「開幕1軍?

 可能性は高くなった。ビビッと感じるものがあった」。梨田監督の強い推薦で、抜てきが決まった。

 オープン戦残り1試合での緊急昇格だった。開幕戦は中継ぎ7人の構想。この日から帯同するのは豊島を含め7人で、球団としては高卒新人投手の29年ぶり開幕1軍が現実的になった。ダルビッシュ、昨季4勝の吉川でも果たせなかった壁。夢破れた中田からは前夜、メールで励まされた。「新人の強みを見せたれ!」「先輩の言うこと、よう聞け!」。同期の怪物も「オレが(1軍へ)上がるまで待っていてほしい」と触発された。

 中学1年時の02年、父敏明さんを49歳の若さで急性心筋梗塞(こうそく)で、翌03年に57歳の母ゆみ子さんを乳がんで亡くした。母親代わりに育て、野球ができるよう援助してきた姉岩本一美さん(31)もこの日、スタンドで見守った。豊島は言う。「いろいろつらいことがあったけれど、強くしてくれたのは野球のおかげ」。福井市の自室には両親の仏壇が置いてある。入寮時も部屋はそのまま、このオフの帰省で活躍を誓った。開幕1軍は「予想はしていなかったけれど、自分の力に自信はあった」。幸せな一報はこの春、もう届けることができる。【高山通史】