<日本ハム1-0ロッテ>◇20日◇札幌ドーム

 これが球界のエースだ。2年連続の開幕投手となった日本ハム・ダルビッシュ有投手(21)が、ロッテを4安打に抑え、10奪三振で完封勝利を挙げた。2ケタ奪三振での開幕戦1-0勝利は史上初の快挙になる。昨年の開幕戦、満塁弾を浴び、まさかの引き分けとなった因縁の相手に雪辱した。北京五輪日本代表の星野監督が視察する中、圧巻の124球で08年のスタートを切った。

 クールな右腕が感情をあらわにした。ダルビッシュが、走りながら何度も右手を握り締めた。顔をしかめながらのガッツポーズで何度もほえた。5回2死満塁。この日最大のピンチで迎えた西岡の一ゴロに反応し、一塁ベースカバーに全力疾走。先制点は与えない。「必死に走りました」。俊足に間一髪で競り勝ちアウト。この執念が完封勝利を呼び込んだ。「セーフかと思ったので、アウトになってめちゃくちゃうれしかった」とちゃめっ気たっぷりに話した。西岡とは先日も焼き肉を食べに行った仲で「打たれたら後で絶対に言われるので絶対抑えようと思って」と、してやったりの表情だった。

 最速は153キロ。「1~3回の真っすぐは今までにないくらい」。6回までに150キロ超えが17球で、変化球の切れも抜群だった。1月の自主トレで野茂から伝授されたフォークボールも、初回に西岡を空振り三振に取った球など5球。ひじの負担を考え、封印したはずが「教えてもらって、せっかくなので」と効果的に交えた。

 後半に球威が落ち、打たせる投球に変えた。「6、7回からめちゃくちゃ疲れていた。おなかの奥の方の筋肉が痛かった。いい意味で力を抜いて投げられた」。安定感は崩れなかった。梨田監督は「交代?

 まったく考えていなかった。7~9回のパーフェクト、さすがだよね」とうなった。

 開幕投手には苦い思い出がある。初めて務めた昨年のロッテ戦では、6回にズレータに満塁弾を浴び白星を逃した。この日も小林宏と息詰まる投手戦となったが、重圧を自力ではねのけた。「選手としても、ファンの皆さんも一番見たかった試合じゃないかと思う。3連覇へ向けて良いスタートが切れた」。2ケタ奪三振での1-0完封は史上初だった。

 今年の正月は、女優サエコ夫人とともに大阪の実家に戻ったが、元日の夜に、下の弟賢太君を引き連れてランニングに出掛けた。例年は完全オフで「1日にトレーニングに出るのは初めて」と、スタンドで観戦した家族を驚かせた。約30分だったが、08年に向けた意識の高さだった。

 各球団のエース級が並ぶ開幕戦で完封一番乗り。試合前激励を受けた五輪日本代表の星野監督の前で、ジャパンのエースを印象づけた。梨田監督の初采配できっちり白星もプレゼント。ウイニングボールを「奥さん(サエコ夫人)に渡そうか迷ったけど今日は梨田さんで」と笑わせた。もうすぐ待望の赤ちゃんが誕生する。「いい胎教?

 ハラハラしたんじゃないですか」。言葉とは裏腹に充実の表情だった。【村上秀明】