<ソフトバンク4-0楽天>◇23日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンクの大学・社会人ドラフト1巡目ルーキー大場翔太投手(22=東洋大)が楽天戦(福岡ヤフードーム)で初先発し、8安打無四球の完封勝利でプロ初勝利を飾った。新人で初登板初完封を記録したのは01年中村隼(日本ハム)以来22人目で、無四球達成はパ・リーグ初。開幕カードでは57年木村保(南海)以来51年ぶりの快挙で、「鉄腕ルーキー」の実力は本物だった。王ソフトバンクは開幕3連勝となった。

 球場が一体となって快挙を祝福した。9回。最後の打者高須を投ゴロに仕留めると、大歓声がマウンドに注がれた。相手のスコアボードに9つのゼロを並べた大場は2度、両手で力強くガッツポーズ。球団史上3人目、無四球となればリーグ初という初登板初完封を飾った瞬間だった。

 大場「素直にうれしいです。すごく緊張したけど、自分の投球を心掛けようとガムシャラに投げました。本当によかったです」。

 ヒーローだけが味わえる人生初のお立ち台とウイニングラン。熱烈ファンで埋まる右翼席へ走り「大場コール」を受けると、何度も頭を下げて感謝の気持ちを表した。初回、初球の146キロの直球で“大場劇場”が幕を開けた。4番フェルナンデスから、144キロ速球で初三振を奪った。「直球が一番自信のあるボールです」。その後もテンポよく楽天打線から凡打の山を築いた。27アウト中、半分近い13個が飛球アウト。その内9個が直球で詰まらせたものだった。「今日は直球に力があった。攻めの姿勢がいい結果につながったのかも」。プロ入り自己最速となる150キロもマークした。

 緊迫した投手戦で投げ負けなかった。7回2死満塁と最大のピンチも、渡辺直を右飛に抑えた。逆に楽天朝井は終盤8回に崩れ、3失点。「投手戦の方がリズムよく投げられる。我慢して投げれば、野手の方が点を取ってくれると信じてました」。ドラフトで6球団が競合した逸材だが、オープン戦は3試合すべてで失点を重ね防御率9・22と不調だった。杉本投手コーチと登板後に毎回、報告書のやりとりをして改善していった。開幕直前には大学時代とオープン戦のDVDを見比べ、投球フォームをチェック。午前4時すぎまで見て、午前10時の練習に参加することもあった。

 大場「毎日野球のことばかり。24時間、頭の中が投球フォームのことでいっぱいでした。何かを変えようと思ったわけではなく、再確認です。長年やってきたものがあるから。何かを変えるということは、やってきたことを否定するようなものだから」。

 信念を貫き本来の姿を取り戻した。ドラフトで自らの右手で引き当てた男の活躍に、王監督は「どえらいことをやってくれた。初登板で大したものだよ。ドラフトの時の興奮を思い出したね」と興奮を抑え切れなかった。133球を平然と投げ抜いた鉄腕ルーキー。底知れぬ力を見せつける鮮烈デビューとなった。【石田泰隆】