<巨人3-2広島>◇29日◇東京ドーム

 巨人の守護神マーク・クルーン投手(35)が広島4回戦(東京ドーム)の9回から登板し、血染めの7セーブ目を挙げた。27日の阪神戦でサヨナラ押し出しに加えて球審への暴言で退場処分を受け、名誉挽回(ばんかい)をかけたマウンドで、割れたツメから出血しながらも1点リードを守りきった。この日はラミレスが同点本塁打、ゴンザレスが決勝本塁打、グライシンガーが3勝目を挙げて全員が投打のヒーローになり、外国人選手4人が出場できるようになった98年以降では初の出来事になった。

 突き上げたこぶしから鮮血が流れた。クルーンは最後の打者を二塁への併殺打に打ち取ると、右腕でガッツポーズを繰り返した。そのまま小笠原、阿部らナインとハイタッチ。勝利の感触に酔った。右手薬指のツメが割れ、真っ赤な血が指を伝っていたが、気にならなかった。

 先頭打者の栗原に死球をぶつけた。フォークがすっぽ抜けた。嫌なムードを小笠原と話しながら落ち着かせ、後続を断った。直球に強いシーボルをフォークで三振。石原は154キロの速球で追い込み、最後はフォークでゴロを打たせた。割れたツメの影響を感じさせない内容だった。

 27日の阪神戦(甲子園)で嫌な思いをした。外角低めへのこん身の1球がボールと判定され、サヨナラ押し出し負け。友寄審判に詰め寄り、暴言を吐いたことで初の退場処分を受けた。翌日、新聞で自分の写真を見て、そこで初めて、上半身裸で帰ったことに気づいたほどだった。

 クルーン

 ああいう試合の後だし、なるべく早く過去のものにしたかった。1つだけ言いたいのは、ぼくは凶暴じゃないということ。審判には敬意を抱いている。ボールと判定した審判に対しても、それは変わらない。

 猛抗議は思わぬ効果も生んでいた。その日の試合後から、公式ホームページには温かい意見が殺到した。セーブに失敗したことを責めるのではなく「クルーンがどれだけの気持ちを込めて、ボールを投げているのかというのが、すごく伝わってきた」などという意見ばかりだった。

 原監督も「微妙なコースであるならばストライクと判定しなければいけない球。仮に逆の立場だったとし、ストライクとされ、勝ち越すことができなかったとしても文句は言いません。私ならバッターに向かって、『今のは手が出なかったのか?

 でもなんとか手を出さないといけない球だぞ』と言ってます。あの球をボールと言っていては野球界がダメになる」と擁護している。

 野球界を左右するほど魂のこもったボールがこの日も投げ込まれた。本塁打、勝利投手、セーブとすべてを外国人4人が記録して勝つのは史上初。「高い年俸だし、期待されてるのは分かってる。チームに貢献したい思いは共有している」とクルーンは胸を張った。【竹内智信】