<ヤクルト4-6巨人>◇5日◇神宮

 開幕から苦しんだ巨人が、初の3位に浮上した。ヤクルト戦、2-2に追いついた5回2死満塁で、復調しつつある阿部慎之助捕手(29)が走者一掃の決勝左中間二塁打で決めた。グライシンガーは4勝目で、開幕シリーズで3連敗を喫した相手に、お返しの3連勝。まだ借金は1あるもの、巨人がジワリ反攻に転じた。6日からは首位阪神と東京ドームで3連戦だ。

 目の前でラミレスが敬遠されるのを見ながら、阿部は集中力を研ぎ澄ました。同点で迎えた5回、満塁で打席が回ってきた。打率はまだ2割1分1厘でも、4月までの阿部とは違う。自信を取り戻した阿部がいた。2球目のスライダーに体が反応した。左中間への走者一掃の勝ち越し二塁打。二塁ベース上で3日に決勝打を打った大道がしたのと同じ両手を突き上げるガッツポーズをして見せた。

 4月はこれまでにないほど苦しんだ。4月11日のヤクルト戦(東京ドーム)の8回に、象徴する出来事があった。無死一塁で初球はバントのサイン。ボールの後、打てのサインに変わったが阿部は自らの判断で送りバントを決めた。ベンチに戻ると「すみません。自信なかったんで送りました」と原監督に謝った。少年野球の時から経験のないことだった。それほど苦しんでいた。連日、志願の早出特打で不振を抜けだそうと必死だった。

 原監督からバットのトップの位置を指導され、大道からは精神面でアドバイスをもらった。2日の全体練習では最後まで振り込み、いい時のDVDもチェックするなどやれることはやった。そうして臨んだここ3試合で11打数5安打6打点。ようやく頼れる男が本調子を取り戻してきた。助言をした大道は「21年やってるんでね。言えることはアドバイスしたい。やっぱりこのチームは慎之助が打たないと乗っていかないしね。早く『最高です』が聞きたいよ」と阿部の復調をわがことのように喜んだ。

 だれの目にも一番のヒーローは阿部に映ったが「あいつの方が頑張ったから」とお立ち台をグライシンガーに譲った。チームも自分も4月に苦しんだ分、まだ最高な気分にはなれなかった。「いいところで打てて良かった。3位?

 粘ってやっていかないといけない」と勝利にも浮かれずに唇をかみしめるような表情でクラブハウスへ引き揚げた。高橋由、上原、二岡、李、豊田と主力が戦線離脱する中、頼れるキャプテンがチームの支柱となって戦う。【竹内智信】