<中日10-3広島>◇7日◇ナゴヤドーム

 復活の一打だ-。梵が二塁打を放ち4月6日以来1カ月ぶりの打点を挙げた。不振のため4月26日に2軍降格し、6日に登録されたばかり。「8番・遊撃」でスタメン出場し、7回2死満塁で中日チェンから左翼線に適時二塁打。守備でも好プレーを見せ「梵復活」を印象づけた。試合には敗れたが、頼れる男が戻ってきた。

 7回裏の守備につく際、左翼席から起こった「ソヨギ、ソヨギ」のコールが懐かしかった。久々のスタメン。最短の10日で1軍に呼び戻してくれたブラウン監督の期待に応えたかった。0-5の7回、味方がつないで2死満塁のチャンスを作った。中日チェンに2球で追い込まれた。しかし、3球目のフォークをとらえた。打球はレフト線で弾む。2者が生還する二塁打。梵が打ったことに大きな意味がある。

 守備でもファインプレーを見せた。3回、大竹が打ち込まれ3点を失い、なお2死満塁の場面。小田の痛烈なライナーが遊撃右を襲う。誰もが追加点を覚悟した瞬間、梵が横っ跳びでダイビングキャッチ。抜けていれば、その時点で試合は決まっていただろう。「負けたんで、何ともいいようがない。(二塁打は)試合は今日だけじゃないので、また頑張ります」。最終回、2死二塁の好機では空振り三振で試合終了。完敗した悔しさ、最後の打者になった無念さを全身からにじませていた。

 4月25日の横浜戦、2-1の7回、梵の痛恨の野選で同点となり、結局逆転負けを喫した。翌26日、横浜スタジアムに梵の姿はなかった。再調整のため登録を抹消された。抹消はプロ2度目だったが、故障以外で2軍に降格するのは初めてだった。開幕から不振が続き打率は2割3分台まで落ち込んでいた。「彼には自分を見つめ直してほしい」とブラウン監督は降格の理由を説明した。ウエスタン・リーグ5試合に出場し5安打。盗塁も3つ決めた。

 8回には自らの野選でピンチを広げ、岸本が崩れた。車に乗り込む際、険しい顔を崩さず「足りないものがあるから、2軍に落ちたと思っているので」と言った。梵がファームにいる間に、新人小窪が大ブレーク。戻ってきてもひと息つく暇もない。ブラウン監督は「梵については、ああいう結果になってよかった。試合を重ねて試合勘を取り戻してほしい」。高内野守備走塁コーチは「小窪もいるしね。いい競争になると思う」。

 試合は3-10で敗れ借金は3となった。それでも、梵の復帰は大きい。誰の目にも大きい。【網

 孝広】