<西武4-6阪神>◇11日◇西武ドーム

 「獣王無敵」とはこのことだ。阪神は西武との首位対決3ラウンドも制し、今季初の6連勝。12球団トップでの40勝到達だ。59試合目での40勝は2リーグ分立後の球団史上最速。「新・代打の神様」と化したベテラン桧山が8回、ダメ押し適時三塁打を放てば藤川がセ・リーグ初の1シーズン11球団制覇に王手をかけるセーブで締め、接戦をモノにした。中日とは最大8・5ゲーム差をつけ、交流戦も単独首位に立った。猛虎の行く手を阻むものは、もう、いない。

 桧山の打球が鋭くセンター右を切り裂いた。来月39歳を迎える代打男とは思えない激走で三塁に滑り込んだ。「1アウトだったし、勝負をかけた」。ベテランらしい冷静な判断力と、乗りに乗っているハートを表すスライディングだ。同時に岡田監督のタクトが的中した象徴的なシーンだった。

 序盤リードを西武の1発攻勢でジワジワと追い上げられた。1点リードで迎えた8回。代打葛城のヒットと途中出場の矢野の犠打で1死二塁。ここしかないというタイミングで指揮官は「新・代打の神様」のカードを切った。「グラマンはこないし左腕の星野は使っている。うちには左バッターが残っていただけよ」。左投手が少ない西武の継投を読み切った。

 桧山の読みも光った。1点勝負と前進守備を敷く西武の外野シフトを計算した。「強い打球を打つことだけを考えた」。交流戦で未知の相手投手。球種は頭に入れつつ、初球から積極打法、直球狙いで打席に入った。「甘い球を1回で仕留める」。大沼の初球ストレートを打ち砕いた打球は西武外野陣の頭上を抜いた。

 値千金の適時三塁打で、代打打率は4割7分8厘(23打数11安打)、7打点にまで上昇した。「どうなってるんだろうね~」。本人も驚く、まさに神がかり的な活躍だ。

 6日ソフトバンク戦でもバットを折りながら2点適時打を放った。だが、本人は直前のファウルでバットがすでに折れていたのでは、と今でも疑っている。「ヘンな音がしたんだよね。あれっとは思ったんだけど…」。ヒットが続く幸運のバット。楽天戦でも微妙な感触の違いを気にして、高橋光に声を掛けていた。

 「このバット、おかしくない?」

 「おかしくないと思いますよ」

 後輩の言葉を信じた。もし本当に折れていたとしても、ヒットが出る。それだけの強運が今の桧山にはある。

 59試合目で40勝到達。03年の60試合を抜き、2リーグ分立後、球団最速のペースとなった。今季最長の6連勝で2位中日に今季最大8・5ゲーム差。さらに楽天が敗れ、交流戦が05年に始まってから初めて単独首位にも立った。

 西武戦の勝ち越しも決まり、現状、パの負け越しチームはない。交流戦を優勝し、セ・リーグ制覇、日本一、さらには全11球団勝ち越しという、史上初の「完全V」への夢も膨らむ。チームの誰もが最高潮。今の猛虎は、そう思わせるほど波に乗っている。【片山善弘】