<阪神5-3楽天>◇17日◇甲子園

 ゲームセットの瞬間、新井は苦笑いと照れ笑いだった。9回、阪神に移籍後、初めて三塁の守備についた。2死後、飛球が舞い上がる。その打球を追う姿はよろよろ。打球をつかんだグラブを胸にあて「危なかったあ~」というように表情を崩した。「体が覚えてたんだと思う」。一塁から三塁へ、位置が変われば風向きも変わる。新井はしっかり仕事をこなした。

 岡田監督が明かす。「桧山が出る前に、新井に三塁もいけるかを確認してから使った。3連敗してたし、こういうゲーム展開やったからな」。シーズン前、キャンプでも三塁の守備練習はしていなかった。ぶっつけ本番が、総力戦で勝ち取った白星を象徴した。

 頼れる男はもちろん、バットでも貢献した。8試合続いていた安打はストップしても、2点をたたき出した。3回1死三塁で強烈な打球が、遊撃手のエラーを誘う先制打。7回にも同点に追いつく犠飛を放った。劇的な逆転勝ちの中で、存在感を示した。

 「すごい試合でしたね。(高橋)光さんナイスバッティングでした。また明日頑張ります」。欲するのは自身の記録よりもチームの勝利。連敗を脱出し、新井の笑顔が絶えなかった。【福岡吉央】