<広島2-6巨人>◇29日◇広島

 北京五輪日本代表の巨人上原浩治投手(33)が前半戦最後の広島戦(広島)で今季初セーブを挙げ、8月の五輪へ復活をアピールした。3点リードの8回から登板し、2イニングを3奪三振、無失点に抑えた。先発内海哲也投手(26)が5回2失点で7勝目。3番小笠原道大内野手(34)が先制、ダメ押し打、アレックス・ラミレス外野手(33)が横浜村田と並んで今季30号を放つなど援護した。

 最後の1球は146キロの速球だった。上原は勝利を確認すると、阿部とハイタッチを交わす。前半戦最後の試合で今季初セーブ。2回を1安打、3奪三振で無失点に抑える危なげない内容だった。「やるべきことをやってきて、その成果が出てきつつあると思う」。北京五輪のためチームを離れる前に、1つ仕事ができた充実感があった。

 不調の要因はメンタル面が大きかった。16日の中日戦(札幌)。1点リードの場面で連打を許し、逆転負けした。チームに貢献できない申し訳なさが胸を突いた。悩んだ末、携帯電話を手に取った。日本代表の大野投手コーチに「やっぱり、しんどいです」と辞退を申し出た。だが翌日発表の日本代表に上原の名は残った。「こうなった以上は1日を大事にやっていくしかない」と腹をくくった。

 テレビ番組で星野代表監督が「1球見ただけでどこが悪いか分かった。オレなら直せる」と言った際には「直してくれるなら土下座してでもいい」と思うほどだった。だが、それと同時に付きっきりで見てくれた巨人の首脳陣のためにも、結果を出したい気持ちが高まった。約2カ月間、面倒を見てくれた小谷2軍投手コーチのことを投げる度に「見ててくれたかな」と気にした。遠投などの特別メニューに付き添ってもらった尾花投手コーチにも「毎日見てもらって申し訳ない」と感謝でいっぱいだった。

 これまでにない苦しみの前半戦。中でも2日のヤクルト戦では、2回で6安打を浴び3失点。日本代表の宮本主将らにボコボコにされた。味方打線の奮起で今季初勝利を挙げながら最悪の内容。「あそこがどん底だと思った。あとは上がっていくだけだってね」。気持ちを切り替えたら、調子は上向いていった。

 上原の復活を原監督も喜んだ。「彼もいい精神状態で全日本に合流し、北京で戦ってくれることでしょう」と気持ち良く送り出す。さあ、今度の目標は金メダルだ。「調子が上がっていって山になった時に、金メダルをかけたマウンドに登れれば…」。日本中が待ち望む光景を上原も脳裏に描いている。【竹内智信】