<中日3-2巨人>◇9日◇ナゴヤドーム

 中日岩瀬仁紀投手(33)が史上初の4年連続30セーブを達成した。1点リードの9回に4番手で登場。2死から坂本に中前打を許したが、続く代打大道を二ゴロに抑え、今季3度目の4連勝を締めくくった。チームはこの日敗れた4位広島、5位ヤクルトに3ゲーム差をつけ、単独3位を確保。守護神の節目のセーブで、クライマックスシリーズ進出に勢いがついた。

 岩瀬のピッチングには貫録が漂っていた。1点差で迎えた9回、当然のごとくマウンドに上がった。二岡を空振り三振、北京でともに戦った阿部を遊ゴロ、坂本にヒットを許したが、代打大道を外角の直球で冷静に二ゴロに打ち取った。「(記録は)意識はしていた。ほっとしています。最低50試合、30セーブは目標にしていたから。ケガなくやれているのは頑張っているかなと思います」。ヤクルト時代の高津(現韓国ヒーロー)、ロッテ時代の小林雅(現米ツインズ)の3年連続を抜いて史上初の4年連続30セーブ。今季3度目の4連勝を締めたのはやはり守護神だった。

 8月の北京五輪はまさに悪夢だった。現地入りした直後におなかを壊した。ここに極度の重圧が加わり、体調は最悪だった。星野監督の信頼のもとに今シーズン1度もなかった2イニング登板にも挑んだが、予選リーグで2敗。そして準決勝の韓国戦では4番李(巨人)に悪夢の決勝弾を浴びた。さすがの岩瀬もその夜はホテルの自室にこもったという。星野ジャパン5敗のうち、3敗を喫した。心身ともにボロボロだった。

 それでも岩瀬のすごさは失敗の後にこそある。帰国すると27日、敵地・甲子園での阪神戦でセーブをあげて見せた。帰国後、五輪の映像はまったく見ていないという。「過去のことを引きずっても仕方ない」という岩瀬ならでは一流の切り替えが、結果として表れている。常にチームの勝敗を背負うストッパーは失敗すればダメージは大きい。それでも翌日にはマウンドに上がらなければならない。後悔を引きずれば相手の餌食になる。どんなに悔しくても引きずらない。その積み重ねが4年連続30セーブという偉業なのだろう。

 残り23試合。先には10年連続50試合登板、4年連続40セーブという前人未到の記録が待っている。「疲れはだれしもある。まだ踏ん張らないといけないと思っている」。これでクライマックスシリーズ出場権を争う広島、ヤクルトに3ゲーム差。オレ竜のプレーオフ進出は守護神の大記録とともにある。【鈴木忠平】