<広島10-0中日>◇20日◇広島

 オレ竜の今季が“終了”した。中日は3位争いのライバル広島に投打に精彩を欠く内容で連敗。この日の敗戦で残り13戦を全勝しても、現在首位争いを演じる阪神と巨人の両方を抜くことができなくなり、優勝のみを目指してきた落合竜の08年シーズンは、事実上幕を閉じた。まだ3位以内ならクライマックスシリーズ出場の可能性はあるが、広島を上回る自力3位も現段階では消滅した。

 最後はあっさりと幕を下ろした。10点差の最終回、広島の2年目右腕・前田健に3人で料理された。塁に出たのは単打の4人だけ。四球も奪えず、プロ初完封を許した。クライマックスシリーズ(CS)の自力進出が消滅。ただ、CSは眼中になく、ペナントレース優勝のみを目指してきたオレ竜にとって、優勝の可能性が消えたこの日が事実上の“終戦”だった。

 心まで折れたのか-。そう思ってしまうような淡泊な敗戦にファンの怒りが爆発した。「何とかしろー!」。「言い訳すんな!」。罵声(ばせい)を浴びながら落合監督は歩き、語った。表情は能面。口調も穏やかだった。だが、発した言葉から腹の底は煮えくり返っていることがわかった。

 「しかし、悔しくないのかね。うちの連中は…。悔しさがにじみ出るプレーが1つもない。勝つ喜びは知っているんだけど、負ける悔しさは知らないってやつだな。野球をやる以前の問題だということだ」。

 今季を象徴する敗戦だった。初回に先発川井が失った2点を追う展開。4回途中から斉藤、5回には先発要員の小笠原を中4日で投入して何とかしのいだ。だが、打線が援護できない。チャンスは2度。4回1死一、三塁ではウッズが三振、和田が遊飛。5回1死一、二塁では代打の切り札立浪が併殺に倒れた。無援の中、投手陣が力尽きた。

 リーグ、日本シリーズの完全制覇を掲げた今季、常勝軍団がなぜここまで失速したのか。落合監督は広島入りする前、今季の敗因を吐露していた。

 「総括するわけじゃないけどな。取っておかないといけない時に点が取れないから負けたんだ。投手陣はこのメンバーで防御率3点台はそこそこ投げている。まあ、決めたメンバーで負けたなら悔いはないんだけど…。森野がいなくなるまではある程度予想通り。でもそれからメンバーを組めなかった。これほどメンバーがそろわない年もない。今年はそういう年なんだ」。

 キャンプ初日に投手以外のレギュラー8人を公言した。最強の8人で理想の野球を展開する自信があった。だが、5月14日に森野が左足ふくらはぎ肉離れで離脱すると、その後1度も8人はそろわなかった。気づけばリーグ最低打率の、1点を取るのが下手な打線になっていた。

 監督は悔しいのか?

 球場を去り際に質問された指揮官は即答した。「悔しさがなくなったらとっくにユニホームを脱いでいるよ」。目標なき残り13試合。それでもプロとして目の前の勝負に没頭し、与えられた権利、CS出場へ向けて戦う義務がある。【鈴木忠平】