<巨人9-5阪神>◇21日◇東京ドーム

 アニキの連発でも巨人の勢いは止まらなかった。阪神は金本知憲外野手(40)が2打席連続の23、24号ソロと最高の形で、この3連戦初めて先手を奪った。しかし5回裏、好投していた先発の岩田稔投手(24)が突然、崩れる。この回だけで8失点。巨人打線の破壊力に屈した。13ゲーム差を追い上げられたのも現実だが、同率でまだ首位に立つのも現実だ。岡田彰布監督(50)も試合後に言った。「振り出しに戻った。一騎打ちや」。残り14試合。宿敵との最高の戦いが幕を開ける。

 金本は鬼の形相で三塁ベースを蹴った。点差やイニングは関係なかった。6点差がついた9回の先頭で、右前にクリーンヒットを飛ばす。鳥谷の四球で二塁に進み、関本のゴロが二塁手古城のグラブをはじくのを見るとためらわずに本塁に突入した。意地の一打、意地の得点…。ついに13ゲーム差を追いついてきたライバル巨人への果たし状だった。

 2回と4回に上原からソロ本塁打を右翼席にたたき込んだ。前2戦で6本塁打した巨人打線に、必死の抵抗を試みた。今季2度目となる主砲の2打席連発は、5回裏に悪夢の8失点でかき消された。だが、それで闘志のなえる金本ではない。その意気は、傷ついたチーム全体をもう一度揺さぶる力がある。それを感じ取ったのだろう。試合後は無言を貫く主砲にかわり、誰よりも悔しいはずの岡田監督がきっぱり言った。

 岡田監督

 (巨人は)勢いがあった。走者が出ると点が入りそうな雰囲気があった。止めにいったけど、止まらんかった。1戦1戦とはずっと言ってきたけど、これで振り出しになったわけやん。そういう気持ちで残り試合をやるしかないやんか。きっちり並んだわけやろ。一騎打ちやん。他のチームともやるけど、どこと当たっても一緒や。

 この3戦は脱帽しても、ここからはもう、巨人しか見ない。巨人より1勝でも多く勝つことにだけ、全精力を注ぐ。直接対決では圧倒的パワーの前に、なすすべなく3個の黒星を並べた。それでも、何かが終わったわけではなく、ここがスタートだと気合を入れ直した。

 思い起こすのは、昨シーズン9月の戦いだ。阪神は8月30日から怒とうの10連勝。東京ドームで巨人に3連勝し、1位と3位だった順位をひっくり返した。ただその後の失速で、つかみかけたペナントは奪い返された。そのドラマの再現を、今季は演じなければならない。

 岡田監督

 昨年と…真逆になったな。10連勝か。

 その後「反動はあるはず」と問われ「そやなあ」とつぶやいた。敵が足踏みするのを期待するわけではないが、1球団がずっと勝ち続けることがないのも事実だ。振り出しからの一騎打ち。宿命のライバルよ、雌雄を決しよう。【町田達彦】