<ソフトバンク5-1巨人>◇14日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンクがエースの力投で交流戦マジックを2とした。杉内俊哉投手(28)が今季初完投でチーム最多6勝目を挙げた。プロ8年目で初めて死球による押し出しで1失点したが、2回以降は完全復活。巨人打線を9回散発の4安打に抑えてプロ通算70勝目を飾った。優勝マジックは2となり、最短で16日の中日戦(金沢)で連覇が決まる。巨人に2連勝し、交流戦初の全球団に勝ち越しての完全優勝の可能性も高くなってきた。

 完投勝利を挙げた杉内にもうひと仕事残っていた。今季初めてアイシングを施さない姿でお立ち台に“登板”。「久々の勝利でうれしかった。初回はびっくりした。ファンのみなさんもどうなるかと思ったでしょうけど」。5月25日ヤクルト戦以来の勝利を喜んだ。

 プロ8年目で初体験した“珍事”を自虐的なネタにできたのは、マウンドでの忍耐と味方打線の援護があったからだ。お立ち台からさかのぼること3時間。口を「への字」にした杉内がマウンドにいた。

 初回1死から川崎が遊ゴロを一塁悪送球(記録は失策)。小笠原を四球で歩かせ、ラミレスには右翼線にポトリと落ちる不運な当たりで満塁のピンチを迎えた。そこで谷の右足にスライダーをぶつけた。プロ入り初の死球による押し出しで先制点を与えた。「本当にハラハラした」と笑った。

 初回は重心が浮き気味で球もやや高め。だが「僕は尻上がりに良くなる」と自分を信じた。元来が強心臓。この日も試合前に水田、摂津とのんびりと将棋を指していた男は、両腕を頭上で伸ばすリラックスポーズを挟むと、亀井、阿部を外角スライダーで空振り三振に仕留めた。2回以降は本来の力を発揮し、5回まで3者凡退を続けた。2点目を失うことはなかった。

 計算ずくのスロー発進だ。「僕はすぐ肩ができるから」と、杉内はブルペンでわずか10球を投げた状態でマウンドに向かう。長いイニングをにらみ、エネルギー消耗を考慮。初回はユニホームの左ひざは真っ白だが、2回以降は体がしっかり沈み、ひざは土の色を濃くした。調子のバロメーターは右上がりの曲線を描き、9回でも直球は141キロをキープできた。

 粘投の末に打線が7回に逆転。「うちは7、8、9回を任せられる投手がいる。甘えている部分があったかも。今日は最後までと思った」と杉内。勝利の方程式「SBM」を温存させ、左腕エースが意地で今季初めて9回を投げ切った。4安打1失点でチーム最多6勝目、自身節目の70勝目を飾った。

 秋山監督は「2回以降は今年一と言っていいくらい粘り強く投げてくれた」と安心して見守った。ついに優勝マジックは2。「残り4試合、全勝して福岡に帰ってきます!」。杉内は史上初の完全優勝での連覇をお立ち台から宣言した。【押谷謙爾】

 [2009年6月15日12時23分

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